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認知症の世界的権威であるデール・ブレデセン医師の著書が全米で20万部を突破。日本でも2月に翻訳本『アルツハイマー病 真実と終焉』(ソシム)が出版され、わずか2週間で2万5000部というベストセラーになっている。

 

「今や、4人に1人が認知症になる時代。うち6割がアルツハイマー型認知症です。今までは進行を抑えることはできても回復ができないということが、患者や家族を脅かしていました。しかし、ついにブレデセン医師がアルツハイマー型認知症発症の原因を突き止めたのです。世界で初めて、症状が回復することを、この本で明言しています」

 

こう語るのは、同書の日本語版の監修を務めた白澤卓二先生。

 

「これまでアルツハイマー型認知症は、アミロイドβという異常なタンパク質が脳にたまることで神経細胞が死に、記憶をつかさどる海馬から脳の萎縮が始まることで発症すると考えられてきました。しかし、ブレデセン医師の研究により、アミロイドβはむしろ脳を守る物質ということが判明したのです。ただし、このアミロイドβが過剰に蓄積されることで暴走し、守るべき脳細胞を破壊するということがわかりました」(白澤先生・以下同)

 

生活習慣により、脳のなかで増えすぎたアミロイドβを取り除くために考案されたのが「リコード法」だ。昨年12月の時点で500人以上の患者が実践し、効果が認められているという。

 

「肝臓が脂肪を分解してケトン体と呼ばれる物質を生み出すプロセスのことを“ケトーシス”と言います。そして、軽いケトーシス状態を維持することが認知機能を高めるのに最適の状態だとわかったのです。ケトーシス状態にするためには、低炭水化物食、適度な運動、1日に12時間以上の絶食、中鎖脂肪酸100%のMCTオイルなどの摂取が効果的で、これがリコード法のベースです」

 

さっそく、今すぐ実践できる「リコード法」を白澤先生に聞いた。

 

【1】炭水化物を極力減らす

 

食後に血糖値が急激に上がると、膵臓から出る体内ホルモンの1つ、インスリンが大量に分泌される。

 

「インスリンは血液中のブドウ糖の量が一定に保たれるように、血糖値の調整を行っています。小麦や大麦などの穀物に含まれている“グルテン”は血糖値を急激に上げ、アミロイドβを分解する力を弱めてしまうのです。パンや麺類などは食べない“グルテンフリー”にし、その分野菜を多く取るのが理想的です」

 

炭水化物は断つことがもっとも望ましいが、高齢者に“米断ち”はハードルが高い。まずはパンや麺類を減らし、お米は玄米などを選んで、白米の量を徐々に減らそう。

 

【2】1日45mlのMCTオイル

 

サラダ油などの加工オイルの代わりに、体内で速やかに吸収されてエネルギーになりやすいMCTオイルやオリーブオイルを使うことで、ケトーシス状態が促進される。

 

「MCTオイルまたはココナツオイルをスプーン1さじ(15ml程度)、コーヒーなどに入れて1日3回飲みましょう。空腹感が満たされ、間食の予防にも役立ちます」

 

【3】12時間以上絶食する

 

リコード法では、1日の最後の食事と翌日の最初の食事の間隔を、少なくとも12時間は空ける。

 

「絶食が、ブドウ糖を肝臓に蓄積していたグリコーゲンを激減させ、ケトーシス状態を促進させます。日中に断食するのは大変ですが、就寝時間を中心とした半日の絶食ならそれほどつらくありません。夕食は遅くとも19時には取るようにしましょう」

 

【4】睡眠は1日7〜8時間

 

「就寝中の脳はアミロイドβなどの老廃物を取り除く働きをします。また、疲労を回復する成長ホルモンが分泌されるのも睡眠中。睡眠時間が短いと、この両方の作用が足りず、アルツハイマー病につながるのです」

 

脳を休めてストレスをなくすためにも、1日7〜8時間の睡眠をとるようにしよう。

 

【5】1週間で150分運動をする

 

脳の中にはインスリンを分解する酵素があり、これがアミロイドβも分解する。しかし、糖尿病の人はこのインスリン分解酵素の働きが鈍くなるといわれている。糖尿病の発症リスクを減少させることが重要だ。

 

「糖尿病発症を抑えるには適度な運動が不可欠。さらに運動はアルツハイマー病の要因でもあるストレスを軽減し、記憶をつかさどる海馬を大きくする作用もあります」

 

「リコード法」は、すでに重度の人には効果が表れにくい。しかし、初期、また認知症を発症する前の「軽度認知障害」(MCI)の人には、効果が出やすいという。アルツハイマー型認知症は兆候が表れてから発症するまで20年ほどかかるので、40代後半から「リコード法」を生活に取り入れることが予防にもつながる。

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