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「いろいろ物入りな新学期が始まりました。おばあちゃんはおねだりされがちな季節ですね。’12年に電通が行った調査では、年間かかる“孫経費”は平均11万円にもなるそうです。《たくさんお金を払ってあげる=いい祖母》という幻想に悩んでいる人は多いのです」

 

こう話すのは『孫ができたらまず読む本』(NHK出版)の著書もある、家族問題評論家の宮本まき子さん(70)。こうした背景には、子ども世代の晩婚化、祖父母世代の長寿化も関係しているという。

 

人口動態調査によると、女性の初孫誕生時の年齢は、’61年では55.4歳なのに対し、’09年では60.5歳と5年も遅くなった。だが一方、孫誕生から平均寿命までの期間は、約18年から約26年に延長されているのだ。

 

「結果、体力や資金力が続かなくなった祖父母が『孫お断り』宣言をして、断絶してしまうことも。でも、孫は理屈抜きにかわいいし、その成長だって見守りたいのが祖父母の本能。大切なのは“心身の余裕がある状態で、かわいがる”ということです」(宮本さん)

 

孫との付き合いに悩む女性のケースから、その対応を宮本さんに解説してもらった。

 

【ケース1】まるで接待のよう。孫におごられ癖が……

 

小4と小6の孫はおごられ上手。焼き肉店で「こんなおいしいお肉食べたことない」と感激されるとうれしくてエスカレート。今では高級焼き肉店で最上級のセットを遠慮なくパクつく。いまさら「ダメ」とは言えず……。まるで接待のようです。(72歳女性)

 

「舌が未熟な子ども相手に、見えを張る必要はありません。おすしは回転ずしで十分だし、それより高い店は『大人になってからのお楽しみ』ときっぱり断る。ブランドより、一緒に食事する時間を楽しみましょう。子どもたちにも、おごりっぱなしではなく、『今日は払うから、次はお願いね』としっかりプレッシャーをかけておくことも忘れずに」(宮本さん・以下同)

 

【ケース2】借金を求められるが、返済されない

 

車を買いたいという41歳の婿殿。5歳、3歳、0歳の子どもがいて、「チャイルドシートが3つ必要だから、大きめの車が欲しい」と、借金を求められています。しかし、引越し資金の半分を出してあげたときも、「絶対に返すから」と言ったのに、返済されていません。孫のためなのか、子どものためなのか……。お金は減る一方です。(62歳女性)

 

「“貸した金は返してもらう”が基本。うやむやは絶対ダメ。お金を貸すときは、1カ月1万円でもいいので、どの銀行口座に振り込むのか、返済計画を出させましょう。そうすれば、資金計画も見直し、買える範囲のものに切り替えるはずです」

 

【ケース3】孫に援助しているのに息子の嫁がムダ遣い

 

「生活が大変だ」とこぼす36歳の嫁。3歳の孫に不憫な思いはさせたくないので、生活費の一部を払ってあげていました。ところがある日、嫁は「いつも頑張っている自分へのご褒美」と、ルイ・ヴィトンの30万円の新作バッグを自慢げに持ってきた。「そんな余裕があるなら、お金いらないわよね」と喉元まで出かかったのですが、孫を遠ざけられるのも嫌なので言えませんでした。(75歳女性)

 

「生活費として、月々数万円単位で子どもたちにあげているケースは、少なくありません。でも、その使途を知らなすぎ。孫と一緒にいるときのみ、必要なもの(食材や孫の洋服)を買うなど工夫して、使途を“見える化”しましょう」

 

【ケース4】新居の資金として500万円を要求された

 

息子夫婦が家を買うことになり、「6歳になる孫を豊かな環境で育てられる」と、500万円もの頭金の援助をお願いされました。虎の子のお金はあるけど、老後の生活がありますから……。(76歳女性)

 

「住宅購入の援助は高額なだけに、祖父母世帯の老後破産の第一歩になりかねません。子どもたちの年収や借金、自分たちの老後に必要なお金をお互いに情報公開してみましょう。無理なお願いはしてこなくなるはずです」

 

大きな声では言えないけれど……。「孫には尽くして当たり前」。そんな子どもの態度に辟易している人も多い。そこで、孫疲れを防ぐ7カ条を紹介。

 

(1)“労働力”はお金に換算せよ。そして、かかった費用は子どもから取る

(2)孫の教育費の援助を求められたときは、孫の教育は子どもがするものと心得よ

(3)孫にお金を出しても、子ども世代とは割り勘を徹底せよ

(4)孫にぜいたくを覚えさせない

(5)返済計画のない借金は許すべからず

(6)子どもにお金を渡すのではなく、孫の目の前でお金を使え

(7)必要な老後資金を子どもに情報公開せよ

 

人生の最期に“もっと孫と過ごしたかった”と後悔しないためにも、日ごろからの孫との付き合い方、距離の取り方が大事なのだ。

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