先見性が高い本音の発言で人気を集めるホリエモンが、自身初の本格教育論『すべての教育は「洗脳」である』(光文社新書)の中で、これからのビジネスで生き残るカギ、そして「幸せ」の本質について持論を語った。
「インターネットの発達と、LCCなどの低コストの移動手段のおかげで、僕たちは国境を無視して世界の誰とでも瞬時に交流できるようになった。国家は“想像の共同体”とも呼ばれましたが、まさに今、その枠組みは意味を失いました。名実ともに虚構の産物です。
その“国家幻想”の消滅と同時に、社会から『幸福の正解』もなくなりました。いい大学に進学し、いい企業に就職し、結婚ができれば安泰だという従来の幸せモデルはもはや機能しない。今、僕たちが向き合うべき課題は、『いかにいい大学に入るか』ではなく、『いかに自分だけの幸福を見つけ、追求するか』です」
国家が設定した義務教育を経て、健全な労働者となる――これまでの幸せのロールモデルをなぞるのをやめ、自分だけの幸福を追求するということは、用意されたレールの上を歩くのを拒否するということだ。では、レールから外れた後はどうすればいいのか。
「進むべき方向、何のために何をするのか、どんな風にするのか、すべてを自分で決め、自ら責任を負いながら突き進めばいいんです。新しい時代を楽しく生きるために欠かせないこの原動力を、僕はシンプルに『没頭する力』と呼んでいます。僕はこれまでの人生で、親や学校教育に忠実だったことは一度もない。僕が唯一従っていたのは、何かにのめり込んでいく自分、つまり『没頭』です。それが僕を数々の遊びに、パソコンに、そして幾多のビジネスに向かわせてきた。僕にお金や学び、そして何より生きる楽しさを与えてくれたのは、学校ではなく、没頭という体験だったと断言します。とにかく、今の自分が夢中になれるものに徹底的にハマればいいんです」
たしかに好きなことに夢中になるだけでいいのなら、これほど幸せなことはないだろう。しかし、この弱肉強食の世の中、それで本当に食っていけるのだろうか?
「僕は常々、『遊びは未来の仕事になる』と言ってきました。IT業界の仕事を思い浮かべれば、『遊びから生まれたもの』の割合がとても高い。現在、世界で大ヒット中のSNSアプリ『スナップチャット』は、送った写真などが最大で24時間で消えてしまうという特徴があり、『所有』よりも『アクセス』に価値を見出すデジタル世代の若者に受けた理由がこれです。開発者のエヴァン・スピーゲルも、『重要なのは〈楽しさ〉』と語っています。
この『楽しさ』は、幸福にもつながります。僕は、これからの幸福の指標は『感情のシェア』だと考えています。その感情とは、『楽しい』『嬉しい』『気持ちいい』といった『快』です。『快』をシェアすると、そこにたくさんの賛同者が集まり、つながっていく。そして、つながった全員に豊かさがもたらされる。この共感こそ、これからの世界を動かす原動力です。
ピコ太郎は、『快のシェア』をグローバルな単位で実現した好例です。彼自身も、初めから世界的ヒットを狙ったのではなく、自分の『面白い』『楽しい』をシェアしたいという純粋な思いから動画を作ったと話しています。やりたいことに本気で取り組めば、必ず支持してくれる人が出てくるということです」
やりたくないことをやらされているだけでは、いいものは生まれないし、そもそも続かない。職を得るのが困難な時代、むしろ無理に外へ求めるのではなく、自分の中で本当にやりたいことを見極め、腰を据えてそれに取り組んでみることで、おのずと道は開けるのではないだろうか。
『すべての教育は「洗脳」である 21世紀の脱・学校論』(光文社刊・税込799円)
著者プロフィール
堀江貴文(ほりえたかふみ)
一九七二年、福岡県生まれ。本音で本質をえぐる発言が人気を集める敏腕実業家。SNS株式会社ファウンダー。1991年、東京大学に入学(後に中退)。在学中の96年、有限会社オン・ザ・エッヂ(後のライブドア)設立。2002年、旧ライブドアから営業権を取得。04年、社名を株式会社ライブドアに変更し、代表取締役CEOとなる。06年1月、証券取引法違反で逮捕。11年4月、懲役2年6カ月の実刑判決が確定。13年3月に仮出所。主な著書に『稼ぐが勝ち』(光文社)、『ゼロ』(ダイヤモンド社)、『本音で生きる』(SBクリエイティブ)、『99%の会社はいらない』(ベスト新書)など多数。