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(写真・AFLO)

 車や人に石を投げたことを父親に注意され、5分間、山林に置き去りにされた田野岡大和くん(7)。果たして父親がとった行動は「しつけ」なのか「虐待」なのか−−。

 

こうした議論が沸き起こるなかで、いま注目されているのがアドラー流の“叱らない育児”だ。アドラー心理学に基づくカウンセリングやセミナーを開催している「ヒューマン・ギルド」代表の岩井俊憲さんは、こう考える。

 

「アドラー心理学の基本的な考えは相互尊敬、相互信頼です。あえて“相互”とうたっているように、親子という立場の違いこそあれ、お互い対等であるという考え。そういった関係性で尊敬し、信頼を寄せていれば、子供は不適切な行動を起こさなくなると考えられています。反対に叱る、罰を与えるという行為は、対等ではなく支配的な上下関係を生み出してしまう。それが何より、親子関係を悪化させる要因となるのです」

 

近年、岸見一郎氏の『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)がベストセラーになるなど関連本も増え、一般に知られるようになったアドラー心理学とは、オーストリアの精神科医で心理学者のアルフレッド・アドラーを祖としたもの。

 

岩井さんは「アドラー心理学は育児・教育分野に取り入れると、高い効果を得られる」と語るが、“叱らない”ことは、子供甘やかし、問題行動をエスカレートさせてしまうのではないだろうか。

 

「むしろ逆です。そもそも子供は親に注目されたいがために騒がしくするなど、不適切な行動をとることが多いのです。それを叱りつけて罰すれば、自分が“注目されている”と考えてしまうわけです」

 

こうした“注目されたい”という状況はまだ初期段階。それを積み重ねていくと、次に“負けたくない”という思いが強くなるという。

 

「さらに子供を力で押さえ付けようとすると、親に仕返しをしようとします。毒づき、意地悪をし始める。しかも、それを放置すれば、最終的には無気力になり、引きこもりになることもあるでしょう」

 

また、何か失敗してしまったとき、感情に任せて叱れば、子供は次の失敗を隠すために嘘をつくようになる。だから「正直に話してくれてありがとう」とまずは寄り添い、次にどうするかを一緒に考えるという姿勢で臨む。アドラー心理学では、こういった『勇気づけ』の言葉がけが重要視されている。

 

このような勇気づけの言葉が、将来の子供にとって大きなプラスとなると、岩井さんは言う。

 

「勇気づけによって、子供は自分で考えて行動し、答えを見つけます。それが自主性、社会性、責任感を育むのです。それらは、アメとムチのような“外圧”では、身に付かないのです」

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