「もともと馬のトレーナーだったアメリカ人のリンダ・テリントン・ジョーンズさんが、馬のパフォーマンスを高めたり、ケガや病気の治療の助けとして生み出したのが『テリントンTタッチ(Tタッチ)』。そのメソッドをペットに応用したもので、名のとおり、マッサージではなく皮膚の下の神経に刺激を与える“タッチ法”です。ワンちゃんに安心感を与えるので、よりコミュニケーションがしやすくなったり、“むやみにほえる”といった問題行動の改善につなげたりすることができます」
そう語るのは、ドッグトレーナーの油木真砂子さん。今年の干支はペットとしても人気の“戌”。古代から愛され、従順でいつも寄り添ってくれるワンちゃんたち。そんな犬と、もっと仲よしになれるコミュニケーション法がTタッチだ。
Tタッチは、犬だけでなく神経が通っている動物ならOK! ネコやウサギ、ハムスター、鳥にも応用できるとか。そこで、ドッグトレーナーの油木真砂子さんに、誰でも簡単にできるTタッチを教えてもらいました。
まずは、Tタッチ前のご挨拶。よそのお宅のワンちゃんには、Tタッチを始める前に、手の甲の匂いを嗅いでもらい、ワンちゃんが“ちょん”と鼻をつけたら、受け入れてもらえた合図。
【1】基本のTタッチ「クラウデッドレパード(雲豹のタッチ)」
犬の後ろや横にまわり、胸のあたりに手をあててから、もう片方の手でTタッチを開始。指の腹を軽く犬の皮膚に置き、時計回りに1周と4分の1、円を描くように皮膚を動かす。これをいろいろな場所で行う。次の場所に移動するときは、手をあてたまま毛並みに沿って。
「体全体に使える基本のタッチは、“雲の上をそっと歩く豹のように”軽い力で皮膚を押すのがポイント。円を描くスピードは約3秒くらいで。そして“1周と4分の1”がミソ。この半端さが“新しい刺激”として伝達されるようなんです」(油木さん・以下同)
【2】耳のTタッチ「イヤースライド」
親指を上にし、残りの指で耳の根元を挟んで、耳の先(毛の先端)までスライドさせる。耳全体をくまなくスライドさせて隅々まで行き届くように。
「耳へのタッチは心地よいようで、好む犬は多いです。落ち着かせたりなだめたりする効果もあります」
【3】口のまわりのTタッチ
指の腹を使い、鼻先から口まわりにかけ、時計回りに1周と4分の1、小さい円を描きながら細かくタッチしていく。
「小さい犬なら指1本でOK。正面から急に口元に手を置くとビックリさせるので、後ろや横にまわり、頭や耳を撫でて、安心させてから始めましょう。むやみにほえたりする犬の問題行動が、マウスタッチで改善されることもあります」
【4】ネコも大好きTタッチ「ヘアスライド」
毛の根元を優しくつまみ、時計回りに1周と4分の1、円を描くように皮膚を動かしたら、スッと撫でるように毛先までスライドさせる。
「引っ張りすぎず、皮膚を動かすイメージで。リラックス効果が高く、ネコも好むことが多いですよ」
【5】安心感を与えるTタッチ「パイソンリフト」
両方の手のひら全体を抱きかかえるように犬の体に添え、皮膚だけをゆっくり持ち上げてから、持ち上げた皮膚を元に戻すように、ゆっくり下ろす。細い足は指2本くらいを使って同様に。
「全身に使えるこのタッチは、緊張をほぐしたり、体のバランスを整えるのに効果的といわれています」
“初めまして”のワンちゃんでもたちまち仲よくなれちゃう、Tタッチを試してみよう!