“がん闘病で逝去”33歳母が愛娘に遺した「みそ汁レシピ」

「はな、毎朝のみそ汁作り、頑張っているよ。天国のママとの約束だからね」と話すのは安武はなちゃん(9)。はなちゃんは、毎朝自家製のおみそを使って、自分でみそ汁を作る。5歳のときに33歳の若さで天国へと旅立った母・千恵さんとの約束を守るために。

千恵さんは’00年25歳で乳がんを発症し手術と抗がん剤治療を行ない回復した。翌’01年26歳で、西日本新聞社勤務の信吾さんと結婚。’03年28歳のときにはなちゃんを出産するが同年暮れ、がんは左肺へ転移。治療に加え、玄米食と代替療法により一時は転移のがんは消えた。

肝臓への転移が見つかった直後の’06年、ブログ『早寝早起き玄米生活〜がんとムスメと、時々、旦那』を立ち上げると、多いときには1日9万アクセスを超える人気サイトに。だが闘病の末、’08年7月に千恵さんは永眠してしまった。信吾さんは当時をこう振り返る。

「千恵が亡くなった後、僕は巨大な喪失感に襲われていました。辛そうな僕を見て、はなは夏のある日、包丁を取り出してみそ汁を作りました。千恵が教えたみそ汁を。それだけじゃなかった。風呂掃除、洗濯ものたたみ……」

4歳の誕生日、千恵さんは愛娘に料理を教え始めた。自分がいなくなっても遺された娘が一人でも生きていけるようにと。そのみそ汁は33歳の妻が遺した”命の味”がした。おいしさの秘訣をはなちゃんは教えてくれた。

「最初にかつお節を削ります。そして夜のうちにこんぶと水を入れておいた鍋を沸かし、沸騰直前にこんぶを出すの。かつお節を入れて火を強くして、ふわっとさせたら、火を切りそのまま冷ますの。じわっとだしが出るよ」

今年3月、千恵さんのブログを基に、夫・信吾さんが家族の闘病の軌跡を綴った『はなちゃんのみそ汁』(文藝春秋刊)を出版。すでに2万部を超え全国に感動の輪が広がっている。

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