「今は必ず、原作をベースに脚本を作ることになっています。とはいえ、原作は終了しているので、同じ話をただ使い回すのではなく、いかにアレンジできるかが、脚本家の腕の見せどころなんです」
そう話すのは『サザエさん』の放送開始から脚本に携わってきた、メーンシナリオライターの雪室俊一さん。
『大工のジミー』なるチャラ男キャラが登場したり、家長・波平が弱みを見せたりと、”何かヘン!”と古参ファンも困惑しているという最近の『サザエさん』。来年、45周年を迎える長寿アニメに何がおきているのか?
「サッカーの話を書いたときは『原作の時代を考えると、サッカーが登場するのは不自然!』と指摘されましたが、じつはサッカーも原作に登場しています。長谷川町子さんの、時代を先取りする力には脱帽しますね」(雪室さん)
『サザエさん』は新聞連載中、戦後から高度成長期へ時代が移り変わっていった。同様にアニメも時代背景はいつも『今』に動いている。決して昔のアニメではないのだ。たしかに最近のサザエさんは、商店街よりスーパーで買い物をすることが増えている。新キャラ『大工のジミー』がチャラ男なのも、設定が現代なら納得。新キャラといえば、タラちゃんをいじめる『タケオ君』やワカメの同級生『ホリカワ君』など、最近、急にサブキャラも増えた。
「じつはジミーも、原作に登場しています。ただ、中島、花沢さん、カオリちゃんなど、サブキャラはもともとアニメのオリジナルが多いんです」(雪室さん)
サブキャラを目立たせるのは、「彼らを通じ、磯野家を描きたいから」だと雪室さんはいう。
「たとえば、ジミーは現代っ子ですが、波平に叱られて以来、彼を崇拝しています。ジミーを暴れさせることで、波平の優しいカミナリ親父っぷりが強調できるんです。でも、創意工夫を続けてもアニメの『サザエさん』は、原作をベースに磯野家を描き続けるホームドラマです。何も変わっていませんよ(笑)」(雪室さん)
もしかして変わったのは、うがった目で見るようになった私たちの方なのかもしれない。