炭水化物ダイエットが引き起こす「死に至る病い」リスク増の恐怖

『炭水化物ダイエット』『糖質制限ダイエット』が今、巷で大ブームになっている。人気の理由は、その手軽さ。スイーツやご飯など、糖質の多いメニューを減らせば肉でも魚でも、カロリーを気にせず食べていいという。新聞などでも糖質制限食を推奨する記事が掲載されなど、『糖質制限』はちょっとした社会現象になっている。

しかしこのダイエット、いいことずくめというわけにはいかないようだ。7月下旬、日本糖尿病学会は「極端な糖質制限は健康被害の恐れがある」と発表した。発表によると「極端な糖質制限を行うと、短期的にはケトン血症や脱水、長期的には腎症、心筋梗塞や脳卒中、発がんなどの危険性を高め、糖尿病や合併症の重症度によっては生命の危険さえあり、勧められない」というのだ。

「糖質を摂取すると血糖値が上昇し、インスリンというホルモンが分泌されます。インスリンは血中に増えた糖を細胞内に取り込むので、糖質を取ると太りやすくなるのは事実です。しかし、糖質は脳や赤血球を作るための大事な栄養分でもあります。一般の方が極端な糖質制限を行った場合、低血糖による頭痛、眠け、発汗、動悸、意識障害などの症状が現れる場合があります」

そう話すのは糖尿病治療の現場に30年以上携わってきた、東京都済生会中央病院・糖尿病臨床研究センター長の渥美義仁先生。渥美先生も所属する日本糖尿病学会では、糖尿病患者のための食事として1食の総摂取カロリーのうち、各栄養素の割合を『炭水化物50〜60%、脂質25%以内、タンパク質25%程度』と定めている。

「もし、炭水化物を全体の40%以下に制限してしまうと、その分タンパク質や脂質の過剰摂取につながってしまいます。タンパク質の過剰摂取は、とくに腎臓へ強い負担を与えます。腎臓は毒素を水分とともに体外に排出し、体の中を“クリーニング”する働きがありますから、それができなくなると倦怠感やむくみなどの症状が出ます。最終的には腎不全などに陥る可能性もあります。また脂質も、ご存知のとおり動脈硬化を引き起こすため、心臓に負担をかけることになり、心筋梗塞や脳卒中の原因となる可能性もあるのです」(渥美先生)

痩せると大人気の『炭水化物ダイエット』だが、糖質制限という言葉のとおり、そう“甘くない”話のようだ。


 

 

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