「『天地明察』でどうしても書かざるをえなかったのが水戸光圀でした。そこで資料に基づき、できる限り忠実に光圀を描いたところ、担当さんが『こんな光圀、見たことがない!』と気に入ってくださったんです。揚げ句に本屋大賞の授賞式で『次は光圀伝!』というチラシまで配ってくれて……。書かないわけにはいかなくなりました(笑)」

 

そう話すのは『天地明察』の著者で作家の沖方丁さん。『天地明察』は沖方さんが’09年に発表した歴史小説。4代将軍家綱の治世に、日本独自の暦を作る作業を任された渋川春海の成長物語だ。”この紋所が目に入らぬか”の水戸黄門、水戸光圀は主人公・渋川春海の支援者として描かれている。そして、このたび水戸光圀にスポットをあてた最新作『光圀伝』が発売された。

 

「こういう小説が書けるようになったのは、”歴女”が登場し、歴史上の人物をアイドルの延長としてとらえるようになったことも影響しているかもしれません。おかげで逆に自由になり、従来のイメージと異なっても受け入れられるようになったんだと思います」(沖方さん)

 

そんな”歴女”たちの影響からか、いま『歴史小説』にハマる女子が増加中だという。そこで、女子も恋する歴史小説10を一挙紹介!

 

『光圀伝』沖方 丁(角川出版)

水戸光圀の出生から死までを映像をみているかのようなわかりやすさで描いた一冊。出生を悩み、兄をうとんだ少年時代。その兄を敬うようになり、兄をまねて詩歌に勤しみつつ剣の腕も磨いた青年時代。筋骨隆々で美男子の光圀はやがて国を思い、民を思うようになる……。

 

『親鸞 激動篇』五木寛之(講談社)

朝廷より念仏禁制の弾圧を受けた親鸞が、妻・恵信とともに京から越後へ流された後、さまざまな試練にみまわれながらも、悩み成長していく姿が描かれている。宗教家とは思えないほどの人間くささに圧倒され、親鸞が一気に身近に!

 

『叛鬼』伊藤 潤(講談社)

室町時代末期から戦国時代初頭の関東を舞台に、終生”下克上”を貫いた武将・長尾景春の物語。目立たずとも戦国時代の醍醐味である”下克上”を地で生きた武将を知ることで、戦国史の見方に深みが出る。

 

『レオン氏郷』安部龍太郎(PHP研究所)

織田信長と豊臣秀吉に仕え、キリシタン大名として生き抜いた蒲生氏郷の人生を描いた物語。理想と現実のはざまでもがく氏郷の姿は、今に通じるモノが多々あり、胸を突かれる。

 

『霖雨』葉室 麟(PHP研究所)

江戸時代後期の儒学者・広瀬淡窓と、長男の淡窓に代わり家業を継いだ弟・久兵衛ら兄弟の情愛を描く物語。淡窓の言葉に、はっとさせられる。

 

『ジョン・マン』[第一部・波濤編/第二部・大洋編]山本一力(講談社)

江戸時代、アメリカで暮らした中浜万次郎の物語。簡単には打ちのめされない万次郎。信じた道を貫く生き様に胸がすく。

 

『ペリー』佐藤賢一(角川書店)

『ジョン・マン』読後に読みたい一冊。万次郎が流された12年後に浦賀にやってきたペリー提督の物語。当時の日本人の姿をアメリカ人の目を通して知ることができる。

 

『蠅の帝国』帚木蓬生(新潮社)

時代は昭和。軍医らを徹底取材して聞き取った話をもとに描かれた小説集。抑えた筆致で当時の緊迫感、無念や後悔を醸し出す。

 

『調印の階段』植松三十里(PHP研究所)

外交官・重光葵の物語。ミズーリ号で降伏文書に調印したことで知られる重光は戦犯として服役後、日本を国際連合へ加盟させる。

 

『翔る合戦屋』北沢 秋(双葉社)

主人公が架空の人物という点でほかの小説とは異なるが、壮大なスケールで描くパワフルな戦国物語は読み出すと止まらない。

 

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