「本を出してから『私も同じ境遇』と、3040代の女性からの共感の意見がすごく届いてます」

 

娘を支配したがる母の呪縛に気づき、苦悩しつつもそこから自立していくまでを描いた田房永子さんのコミックエッセイ『母がしんどい』(新人物往来社)が話題になっている。筆者の田房さんが『母に支配された人生』を語ってくれた。

 

「『結婚は絶対にしなさい。子供は30歳で産みなさい。手に職をつけて、仕事もしなさい』と”洗脳”されていました。だから子供を産んでも家で仕事ができるマンガ家になろうと、小さいときから決めていたんです」

 

まわりには仲よし親子に見えた2人だが「お母さんを大好きと思ったことがなかった」と田房さんは言う。

 

「母は愛情もあり、人情味も厚い『がばいばあちゃん』みたいと思っていたんです。人を笑わせるのも上手、人にプレゼントをするのも大好き。でも、思い通りにならないと、手をつけられないほど怒り、豹変しました」

 

「あなたのため」と言いながら習い事、塾、いっしょの旅……とすべては母親の理想を押し付けられていたという。そんな生活に田房さんは幼いときからずっと違和感を覚えていた。成長してもそれは変わらず、自分の思いどおりにならないとアルバイトや学校の行事に出かけることを邪魔したり、就職してからも親子げんかを引きずり職場にまで電話してきたこともあったそうだ。

 

田房さんの考え方に転機が訪れたのは、29歳、結婚したときのことだった。それまで「親」としてだけ見てきた母を、ふと人間として見たらどうなんだろう?と、母の特徴をネットで検索してみた。そこに現れた『過干渉』の文字に、田房さんはくぎ付けになった。同じ悩みを抱える人がいかに多いかについても。

 

「いきなり視界が大きく広がったようでした。これまで世間の常識と思い込んでいたことは、母ひとりの意見、思い込みであること。強いと思い込んでいた母がとても弱い人だと気づいて、世界がひっくり返りました」

 

その後、心療内科や催眠療法に通い、最終的に母親と決別することにしたという。田房さんは、過干渉を受けた人の共通点は「自己肯定感が低いこと」と指摘する。

 

「『母を嫌いになってはいけない』と思い込んで、自分を諸悪の根源にしてしまうんです。だからこそ『母が大嫌い、親のせいだ』とはっきりと言えるようになることが必要。そこから人生が始まる気がします。『私は大丈夫、母と仲よし』と言っている人ほど無自覚です」

 

コミックエッセイの出版以降、仕事が増えたと語る田房さん。今は「母への恐怖と感謝とが入り交じっている」と、冗談交じりに言えるようになったという。感情をオープンにしたことが、彼女にとって、気持ちの解放につながったのかもしれない。