60年に1度の2大遷宮 使い終えた大量の御用材はどうなる?
新しいお宮を造り、そこに神様にお遷りいただく日本ならではの重要な神事が「遷宮」だ。平成25(2013)年は、日本を代表する2つの神社、伊勢の神宮(三重県)と出雲大社(島根県)の「遷宮」が重なる年として話題になっている。この2つの神社の「遷宮」が重なったのは過去に文化6(1809)年、昭和28(1953)年と2回あり、今回は史上3回目のこと。
そこで今も伝わる日本の伝統「遷宮」について、高知県・若一王子宮の権禰宜、川村一代さんに解説してもらった。
伊勢の神宮の式年遷都とは?「1300年前に天武天皇により定められ、その後持統天皇の4年(690)に第1回が行われました。戦国時代と第二次大戦後に数年の延期はありましたが、平成25年で第62回を迎えます。式年とは『定められた年』という意味で、20年に1度、8年の歳月を費やし、すべての社殿を新しく造り替えていきます。新しいご正殿に神様が遷られ、同時に約800種、1600点の御装束や御神宝も新しくしてお供えされます」
出雲大社の遷宮の様子は?「大国主大神(オオクニヌシノオオカミ)をおまつりし、およそ60年に1度遷宮が行われています。現在の御本殿(国宝)は延享元(1744)年の遷宮で造営されて以来、文化6年、明治14(1881)年、昭和28年と3度『御遷宮御修造』されており、前回の昭和遷宮から約60年ぶりに『平成の御遷宮』がおこなわれます」
気になる、使い終わった大量の御用材はどうなるのか、たずねてみた。
「前回の遷宮で使用された御用材は、資源として再利用されています。伊勢の神宮の内宮・ご正殿の棟持柱は、宇治橋の内側へ。外宮の棟持柱は外側の鳥居として、その後20年使われます。ほかにも、地震や自然災害を受けた全国の神社に移築されるなどして活用されています。前回の式年遷宮後の御用材は、全国169社の神社に譲られました」
日本の神社には、自然を大切に無駄なく活用する「循環システム」が息づいている。今でいう「エコ」の考えが古来より根付いており、世界的に注目を集めているのだ。