全国的に梅雨が開け、日本の夏がやってきた。「そこでひとつご提案したいのが、昔ながらの知恵を生かした生活の工夫です。ほんの少しの風があるだけで体感温度はぐっと変わってきます」と言う生活研究家の阿部絢子さんに、日本の気候風土に合った涼しい家づくりのポイントを聞いた。

 

〈1〉家に「風の通り道」を作る

日本家屋はもともと障子、襖などを取り外せる開口部がたくさんあり、欄間なども風が通るように作られていました。気温は同じでも、風があたると、秒速1メートルで体感温度は1度下がります。気密性の高いマンションでも、窓とドアは最低1つずつあるもの。ストッパーなどを使って風が抜けるようにしてみましょう。ぐんと涼しく感じられるはずです。

 

〈2〉よしずを立てる、すだれを垂らす

外からの熱と視線を遮るのにおすすめなのが、昔ながらの「すだれ」や「よしず」です。カーテンでは日射熱のカットは40%程度。窓の外に取り付ける「よしず」なら80%カット。「すだれ」は室内で使いますが、空気の層ができるので気温を上げません。

 

〈3〉打ち水で涼しい風を起こす

暑くなった地面に水をまくと、水が蒸発するときに地面から熱を奪い(気化熱)、周囲の温度を下げることに。また気圧の差ができるので風も生まれます。これが打ち水で涼しくなるメカニズム。まくのは玄関、庭先、マンションならベランダなど風の入口に。

 

〈4〉緑を育てて目や体にも涼感を

ベランダや庭で植物を育てるのは夏を涼しく過ごす知恵。窓の近くでつる性の植物(朝顔、へちま、ゴーヤなど)を育てると、グリーンカーテンができて涼しくなり、目も楽しませてくれます。

 

〈5〉ベランダのコンクリートの熱を下げる

コンクリートは蓄熱する力が強い素材のため、40度を超えることも。意外と伸縮性もあるため、頻繁に水をまくと亀裂ができてしまうことも。すのこを敷くなどの工夫をしましょう。

 

〈6〉お客さまにはうちわを

昔の家庭ではうちわはおもてなしツールでした。お客様用を用意してあり、暑いなか訪問された方におしぼりと一緒に差し出して使っていただくもの。ちょっとキレイなものを用意しておくのもおすすめです。

 

〈7〉風鈴で耳に涼しく

風鈴をつるして風で涼をとるという風習は、繊細な感性を持つ日本人ならではのもの。鎌倉時代から「風鈴」とよばれるようになり、江戸時代になってガラス製のものが作られました。風鈴の音には脳内にリラックスホルモンを分泌させ、体温を下げる効果があるといわれています。

 

〈8〉カーテンの色は寒色系+レースに

部屋の中で大きな面積を占めるカーテンをブルーなど寒色系にするだけで、涼しい気分になります。こうしておくと冷房の設定温度を少し高めにしても大丈夫。白、薄緑などのレースと組み合わせるのも涼しい効果をあげてくれそうです。

 

〈9〉肌触りがひんやりする和素材を取り入れて

湿度の高い日本の夏を涼しくしてくれるのが、昔から使われている和の素材。畳やい草は感触で涼を楽しめます。フローリングの上にさっと敷けるラグや組み合わせて使えるユニット畳も便利です。

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