NHKの朝ドラ『マッサン』で、妻のエリーは日本人になりきる努力をした。現代の外国人妻は自分の文化を生かしながら周りとぶつかり、新しいものを生み出す。そんなリアルマッサン夫婦を発見!
ニュージーランド・ダニーデンで生まれ育った友岡ジョアンさん(40)は、大学を卒業した’96年7月に来日。日本政府主催の国際交流プログラム「JET」の、アシスタント・イングリッシュ・ティーチャーとして大分県杵築(きづき)市で小・中・高生クラスを受け持つことになった。
「都会は絶対に無理!」とこの地を希望したものの、言葉の壁と慣れない暮らしの中で、戸惑うことばかり。そんな折、町役場勤務の政博さん(50)と出会い、交際を開始した。異国の地で、10歳年上の政博さんは唯一頼れる存在。しかし彼は離婚歴があり、米農家の長男。結婚はほど遠いと思っていたが、ある日友岡家を訪ねると、美しいユリの収穫の真っ最中だった。これがジョアンさんの運命を決めた。
「彼のおかあさんとおばあちゃんは、花や無農薬野菜を作っていました。私は、美しいユリに自然と手がでて、束ねたり出荷のお手伝いをしました。そうしたら彼の家族にとても喜ばれたんです」
ジョアンさんはもともと自然が大好き。稲穂が揺れる広大な農地に1日で魅了されてしまった。
「農家だから五穀豊穣の祈願は欠かせません。お供え物の持つ意味にはじまり、日本の農家のしきたりを理解するのは大変でした。日本のお嫁さんなら『なんでわからんか!』って言われちゃうところだけど、義母は『外国人だからわからなくて当然だね』って、教えてくれました」
ジョアンさんはこの田舎の素晴らしさを伝えることがライフワークになっていた。
「いちばん深刻なことは、後継者問題です。このあたりは、私たちがいちばん若く、次は70代、80代。亡くなる人や、ここを離れていく人、どんどんいなくなっています。未来のことを考えると、どうにかしなければ……」
ジョアンさんは思いを同じくする仲間たちと’01年に「NPO法人ABC野外教育センター」を設立。自然を使ったさまざまなプログラムを子どもや社会人にも提供している。
「冒険教育はコミュニケーション力の向上や信頼関係をどう築くか、問題解決法など、いまの日本の教育に欠けている部分を補う分野です。地域が盛り上がれるなら、できることを何でもして次世代の人につなげていきたい」