餃子の消費量日本一をめぐって、栃木県宇都宮市と火花を散らしている静岡県浜松市は“健康寿命”の日本一として名高い。厚生労働省の研究班が3年ごとに算出する「大都市別の健康寿命」で、’10年、’13年、そして最新の’16年と3期続いて、男女とも1位となったことが先日発表された。
健康寿命とは、日常生活や仕事などを支障なく行うことができる平均年数のこと。同市の男性は73.19年、女性は76.19年で、全国平均と比べると、男性で1.05年、女性で1.4年も元気で過ごしていることになる。なぜ、浜松市には健康で長生きできる人が多いのか?
「餃子の町でもあるので、塩分の摂取量は全国平均並みだと思います。食生活においては特別に健康に配慮をしているわけではないのですが、ふだんの生活を送るなかで自然と健康になっているのが特徴的です」
そう分析するのは、浜松医科大学健康社会医学講座の尾島俊之教授。今回は、尾島教授に浜松市の健康寿命の秘訣を聞いてみた。
■冬でも欠かさずラジオ体操
太平洋に面している浜松市は、一年中温暖な気候だ。
「冬でもめったに雪は降らないので、一年中、外に出て体を動かすことができます。特徴的なのは、ラジオ体操がとても盛んで、夏休みに学校の校庭で体操するだけでなく、神社の境内や公園などでもほぼ毎日のように行われていて、登録されているラジオ体操会場は市内に80カ所ほどを数えます」(尾島教授・以下同)
毎日決まった運動をする、というのは思ったよりも難しい。それがラジオ体操という形で習慣づいているということが、健康増進に一役買っているようだ。また、静岡県はサッカー王国と呼ばれるように、サッカーをする子どもたちが多く、大人になってもサッカーやフットサルなどのプレーを楽しむ人が多いという。
■生涯現役でバリバリ働く
浜松市には緑茶やみかん、ウナギなど有名な特産品が多く、恵まれた自然環境で良質な食材が育まれている。農業や製造業に従事している人が多く、15歳以上の就労率も58.9%(’15年)と全国1位。
「農業には定年がありませんので、生涯現役で働ける環境があるのは健康面で大きなプラスです。ほかにもスズキやヤマハ、ホンダといった大手企業やそれらを支える中小企業が集まっていて、高齢になっても企業の戦力として働いている人が多いのです」
また、静岡県全体でみると、シルバー人材センターの設置率が全国1位(’16年)となっていて、リタイアした後も仕事をもって地域とかかわりをもつ姿が見えてくる。
「春の浜松まつりで、凧揚げ合戦に燃えている人は多いです。また、夏には町内会ごとに本格的な花火大会が行われていて、地域のみんなで集まることが大好きな市民性でもあります」