姑や舅の介護に直面したとき、あなたならどうする? その難題に向き合うために、先輩の体験をレポート。さまざまなケースはあれど、『抜け道を見つけて、賢くすり抜ける』のが正解のようです――。
「先日じぃじが『里華さん、私はいま本当に幸せだよ』って私の目を見て言ってくれたんです。認知症といっても、何もかもまったくわからないわけではないんです」
そう語り始めるのは90歳の義父を自宅介護する高橋里華さん(47)だ。彼女は’87年、15歳のときに第1回全日本国民的美少女コンテストに入賞。その後60本のCMに出演し、’80年代から’00年代にかけてモデル・女優として活躍した。
そして34歳のとき、いまの夫と結婚。’11年から義父母との同居が始まる。
「義父母は持病を抱えて心配でしたし、そのころ起こった東日本大震災もきっかけになりました」
同居するとすぐに、里華さんが義父母の通院の付き添いと家事全般を担うことに。しばらくすると義父の物忘れが激しくなる。
「最初は年相応なのかなと思いましたが、温厚な義父にはありえない暴言を吐くようなことが増えて。義母に促され、受診しました」
脳神経外科ではレビー型認知症と診断された。その後悪化していったのは、肝硬変を患っていた義母が’17年に他界したころからだ。
「『ばぁさんどこへ行ったんだ』と探すのです。『ばぁばは亡くなったでしょう』と告げると、悲しい顔をして。時がたつとまた探すことの繰り返し。つらかったですが、認知症といってもごまかすことはしないと決めて向き合っています」
悲しみも癒えぬ間に、義父の徘徊が頻繁になっていく。一晩中付き合ううちに里華さんが睡眠障害に陥ったこともある。また、レビー型は幻聴・幻視の症状が現れる傾向があるが、それを否定してしまうと不安にさせてしまうので、“ノリ”が大切だという。
たとえば、「お尻をカニさんが挟んでいるよ」と訴えられたときは、「見せて」と言い、チクリとつねって「はずれたよ」と安心させてあげるといった具合だ。
「夫はノリ下手で、真正面から『そんなわけないだろ!』と否定してしまう。『ノリをよくして』と頼むと、『わかった』といいながらも……。実の子どもとしてはイライラしてしまうんでしょうね」
夫に対しては「わかってくれない」という葛藤もあった。しかしいまは、義父の就寝後、時間をつくり本音で話すようにしている。
「最近は夫の口から『どうだった?』と、思いやりの言葉が自然と出てきます。入院などになると費用もかさむので、夫には主に家計を担当してもらっています」
また、介護を担ううえで里華さんの助けになっているのが、5歳と3年生になる娘たちだ。
「じぃじのために絵を描いたり、歌を歌ったり。じぃじからは戦争中のお話を聴いて自由研究にしたり。おかげで娘たちは家族以外のお年寄りにも、優しくできる子に育っていると思います」
じぃじの介護ベッドを設置する1階の居室には、娘たちのジャングルジムもある。
「娘の友達が来たときもここで遊んでいてくれて、にぎやかに過ごせています」
いま里華さんはフラダンスチーム「ラウレア・ラニ」のリーダーとしてチャリティイベントで踊るなど、自分が活動する時間を持つこともできている。公的介護サービスは、週に2度の入浴介助と週1で訪問看護を利用。施設への入所を話し合った時期もあったが、いまはこうしているのが家族みんなの幸せ。試行錯誤の末、いまのスタイルができたのだ。
「わが家はこのままで行こうということになりました。入所したほうがいい方もいるし、心身の状態や性格によっても、使える介護サービスもそれぞれ異なると思うので」と言い、「これはあくまでわが家流です」と語る。
「じぃじにマッサージをしているとこちらがぽかぽか癒されてくる。どうやら一心同体というところにまで来ているようです」