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「亭主元気で、留守がいい」なんて言葉が幅を利かせた昭和の時代には、離婚は夫婦にとって「今生の別れ」とも言えるものだった。

 

ところが平成に入ると、離婚件数はうなぎのぼりに増加。離婚はそれまでの「人生の一大事」から「まあ、よくあること」に。そして、それにともない、離婚後の夫婦の距離感も、徐々に近づいてきた感すらある。

 

実際、テレビのバラエティ番組では、フラットな距離感で共演する元夫婦タレントが、違和感なくお茶の間に受け入れられているし、一般人でも、それぞれのSNSで離婚を報告しながら、その後もあっけらかんとツーショットをアップするケースも増えている。

 

そこで今回は、離婚後の元夫婦たちの最新事情を徹底取材。別れた男女関係はいったいどんなふうに変わってきたのだろう。

 

【読者の実例ケース・1】真田ゆかりさん(仮名・40歳・専門学校講師)

 

29歳で3歳上の同僚と結婚しました。すごく好きだったのかと聞かれると微妙なのですが、当時は年齢も気になっていたものですから……。ただ、彼は仕事熱心で誠実な、いわゆる“いい人”でしたから、「まあ、いいかな」という気持ちでした。

 

結婚後、立て続けに2人の子どもを授かったこともあり、夫婦関係は良好だったのですが、夫は子育てにはまるで関わらない人だったので、徐々に私のイライラが募っていくようになりました。仕事をしながらの家事・育児に忙殺される私を横目に、夫は「資格を取ってスキルをあげたい」などと無神経なことを言いだす始末。私のなかにあった愛情が冷え切ってしまうのは、時間の問題だったのかもしれません。

 

そして、35歳のときに離婚。周囲の友人からは、「養育費はきちんともらえるの?」と心配されましたが、じつは私、その点だけは安心していたんですね。妙な話に聞こえるかもしれませんが、私は夫への愛情はなくなっていたものの、生真面目な性格だけは信頼していましたから。彼は、思ったとおりこれまで5年間、養育費は滞りなく払ってくれています。

 

そういう恩義もあって、日曜日には子どもたちだけ彼に会いに行くという習慣も続けています。彼は「子どもと会いたい」という気持ちがとても強いんですよ。

 

ちなみに私は現在、子どもを連れて実家に戻っているのですが、たまたまシングルマザーに手厚い自治体だったこともあり、生活には大きな支障もありません。

 

そして、こういう環境になって気づいたのは、「夫としての期待」さえ捨てれば、彼のことを「人間としては」まだ信頼できるということ。子どもの送迎時に会うこともありますし、進学のことを電話で相談することもあります。

 

彼にはもう感情的には何もありませんが、円滑に生活していくためには、こういう関係がしばらく続くのも悪くないかなと思っています。

 

【読者の実例ケース・2】佐川麻巳さん(仮名・53歳・会社員)

 

私は40歳(長女が中1、次女が小5のとき)で離婚しました。当初、私といっしょにいたいと言っていた娘たちですが、元夫が「パパは1人になったら東京でホームレスになる」と言いはじめたため、「ママは1人で生きていけるよね……」と夫の元に行くことになってしまいました。

 

離婚後は、束縛が強く口うるさい夫と離れ、毎日が穏やかに暮らせるようになった半面、娘たちと離れてしまったことは本当につらかったですね。娘に会いに行っても、いつも元夫から「来るな!」って追い返されていましたし。きっと私に娘たちを取られることを恐れていたんでしょうね。

 

ただその後、元夫から「ママに会えないと娘たちが不安定になるから」と連絡があり、ようやく会うことを許されました。

 

娘たちが私の家に泊まりに来るようになると、元夫の家での様子もだんだん伝わって来ましたが、彼は娘たちが後ろ指をさされないよう、縫い物やお弁当作りも頑張り、なんとPTAの役員まで引き受けていたそうです。けっして私には弱音を吐きませんでしたが、彼なりに孤軍奮闘していたのでしょう。

 

そんな様子を聞くと、やっぱりどこか「ほっとけないな」という気になりますよね。ですから、彼が娘たちとの関係に悩んでいるようなときは、「お茶でもしない?」と誘い出し、娘たちとの仲を取り持つようなこともしてきました。

 

もちろん離婚そのものはつらかったですが、離婚によって、お互いの関係は確実にいい方向に変わりました。最近では、「きみならもっといい男と結婚できたんだろうけど、俺のせいで人生狂わせちゃったね」なんて殊勝なことを言ってくれるくらいですから(笑)。

 

私はいま、仕事も恋愛も充実していますが、元夫になかなかいい出会いがないことだけが心配の種。元夫は娘たちに「パパが病気になったら面倒みてね」と言っているらしいのですが、それはさせられません。娘たちには「大丈夫、パパの面倒はママがみるよ」と言っています。

 

淡々とした「ビジネスライク」な付き合いから、男女の関係を超えた「友達感覚」な関係……。それぞれの事情は異なるが、元夫との関係は「いい感じ」だという。これからの令和の時代には、離婚はけっしてネガティブな選択肢ではないのかもしれない。

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