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かつて高い資産価値を誇っていたはずの不動産も、近年では少子化による「家余り」で売るに売れない「負動産」になるケースが増えているという。「不動産」ならぬ「負動産」とはなんだろう。

 

「一般的に負動産とは、『持っているだけで資産的にマイナスになる不動産』のことを指します。もっともイメージしやすいのは、地方にある戸建ての空き家でしょうか。もともと住んでいた親は亡くなったものの、売却もできず子どもが固定資産税を払い続けているような状態は、負動産の典型例です。また、それに限らず『いまよりも価値が下がっていく不動産』も、大きな枠で負動産に該当すると私は考えています」

 

そう語るのは、負動産問題の専門家で、相続・不動産コンサルタントの藤戸康雄さん。すでに国内にある「所有者不明」の土地は九州の面積を超す広さに達しているが、藤戸さんは「今後はさらに、マンションも含めた負動産が大幅に増加していくでしょう」と警鐘を鳴らす。

 

「まず、負動産の増加を語るうえで切り離せないのが空き家問題です。主な原因は2つありますが、1つ目は人口減少と超高齢社会、さらに結婚数の減少による世帯数の減少です。国立社会保障・人口問題研究所が’18年に発表した『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』によれば、日本の世帯数のピークは’23年の5,419世帯と推計され、その後は減少に転じ、’40年には5,076万世帯になる見込み。世帯数が減ればそれだけ必要な家の数も減りますので、おのずと空き家は増えるでしょう」

 

2つ目は、すべての団塊世代が’25年ごろまでに後期高齢者の仲間入りを果たす、いわゆる「2025年問題」。

 

「縁起でもないことではありますが、世帯数が減り始めるのに高齢者世帯が増えるということは、高齢者が亡くなった後の家、イコール、空き家が増え続けるということです。野村総合研究所の’19年の予測によれば、『空家等対策の推進に関する特別措置法の影響や世間の注目により既存の住宅の除却や、用途転換が以前の見込みよりも進み、空き家急増シナリオは避けられたものの、’33年に空き家率は17.94%に上昇する可能性がある』とされています」

 

総住宅数における空き家数および空き家率の推移は、加速度的に増加しているのは明らかだ。

 

「いっぽうで、新築される住宅はそこまで減っていないのです。この先は多少減ると予測されているものの、空き家数の増加を考えると微減にすぎないといえるでしょう。日本は『住宅過剰社会』に突入しています」

 

そこに追い打ちをかけるのが、若い世代の価値観の変化だ。

 

「これまでの日本人は『不動産、とくに土地は、持っていれば将来的に価値は上がりこそすれ、下がることはない』という『不動産神話』のなかで生きていましたが、この神話はバブル崩壊とともに吹き飛びました。バブル崩壊後に生まれた世代もとうに大人になったいま、『子育て世代になったらローンを組んで住宅を購入する』という旧来のライフプランは、主流ではなくなるでしょう」

 

すでに「若者がクルマを持たなくなった」といわれて久しいが、代わりに必要なときだけ利用できるカーシェアリングサービスが、人気を集めるようになった。

 

「住宅も同じように、所有から利用へと変わってきているのです。今後ますます、不動産は供給過剰状態に陥ると予想されます」

 

そうなれば当然、不動産市場全体が下落。藤戸さんは、都心の一等地にある実家でも負動産の予備軍になりえると指摘する。

 

「すでに都心でも、木が鬱蒼と生い茂った空き家を目にするようになりました。相続争いなどの問題もあるのでしょうが、もし所有者や相続人たちが『場所がいいから、売ろうと思えば高く売れる』と思っているのなら大間違いです。需要自体が減っているなか、不動産業者もいつ空き家状況が解消するかわからない物件より、いま売りに出ている土地や家を優先して扱います。都心でさえすでに『その気になればいつでも売れる』などという時代ではなくなっているのです」

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