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返礼品競争ばかりが注目される「ふるさと納税」に、新しい形が出てきた。家で眠る楽器を、学校や音楽団体などに贈る「楽器寄附ふるさと納税」が、それだ。ふるさと納税とは、居住地以外の自治体に寄付をし、寄付額から2,000円を引いた額が税控除される仕組み。これまでの現金と違い、楽器を寄付するとは? その仕組みを経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれたーー。

 

■査定額マイナス2,000円が税金から控除

 

楽器寄附ふるさと納税は昨年10月、三重県いなべ市が始めました。その後、北海道東神楽町、埼玉県北本市、宮城県富谷市にも広がっています。

 

寄付の手順は、次のとおりです。

 

(1)楽器寄附ふるさと納税のホームページにある希望リストを見て、寄付したい学校等を選びます。

(2)自治体あてに楽器査定の申し込み。査定は、中古品売買を行う査定協力事業者が行います。

(3)書面で一次査定。一次査定の金額に問題なければ、梱包キットを取り寄せ、楽器を送ります。

(4)最終査定。査定額に納得できれば、寄付が実行されます。

 

楽器を贈った方は、最終査定額を寄付したとみなされます。一般のふるさと納税と同様、査定額から2,000円を引いた額が控除されるので、確定申告などをお忘れなく。

 

楽器寄附ふるさと納税に返礼品はありませんが、感謝の手紙が届いたり、演奏会に招待されることもあるようです。

 

また、千葉県松戸市や兵庫県洲本市などでは、市独自で、家で眠る楽器を受け付けています。

 

これらはふるさと納税の仕組みを利用しないため、税控除はありませんが、地元の学校などに贈るので、顔の見える支援ができます。

 

楽器はたとえ使っていなくても、愛着があって捨てられない方が多いと思います。それを必要な方に届け、有効活用できれば、贈る側も受け取る側もうれしいでしょう。

 

ほかにも、ふるさと納税の新しい形が生まれています。家庭の余剰電力を寄付する「ふるさとエネルギーチョイス えねちょ」です。

 

家庭で発電され余った電気は、「固定価格買取制度(FIT)」で、当初電力会社と契約した価格のまま売電できると、国が保証しています。しかも当初は、太陽光発電などの普及を狙って、売電価格も高めに設定されていましたが、制度利用は10年間限定でした。

 

FIT制度は’09年から始まり、10年間を終える卒FIT家庭が今年11月から増えてきます。売電価格はこの10年間で下がり続け、卒FIT家庭が新たに電力会社と契約すると、売電価格はそれまでの4分の1以下になることも。

 

卒FIT家庭は、安くても同じ電力会社で売電を続けるか、新しい売電先を探すか、蓄電池等を導入して自宅で使い切るかといった選択を迫られているのです。

 

えねちょは、そうした余剰電力を寄付してもらい、寄付先の自治体で利用する仕組みです。特産品などの返礼品も用意されています。

 

さまざまなアイデアで、皆が喜びあえる寄付文化が、日本にも浸透していってほしいと思います。

経済ジャーナリスト

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