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揚げ足取りや不謹慎狩りなど、SNSでの他者攻撃が問題視されるなか、コロナウイルスとともに“イライラ”も世界じゅうに蔓延し、加速度を上げている。自分の心を落ち着け、いたわるカギは不安と上手に付き合うことにあったーー。

 

「近ごろ、コロナ疲れからイライラする人が増えていますよね。そんなときは特に、自分と違う意見をもった人に対して『許せない!』という感情がわいて、SNSを中心に攻撃を始めたり……。私はこれを『正義中毒』と呼んでいます」

 

こう指摘するのは、『人は、なぜ他人を許せないのか?』(アスコム)の著者で脳科学者の中野信子さんだ。

 

「たとえば有名人の不倫問題にしても、“みんなのルール”を破るなんて許せない、と強い怒りの感情が暴走し、心ない言葉でたたきのめしてしまう。自分の生活には関係ない、見ず知らずの人に対してもです」

 

私たちは、この正義中毒の状態に簡単に陥ってしまうという。

 

「その根っこにあるのは“不安”です。不安が攻撃という行動に駆り立てる。今の時代、攻撃の輪はSNSによってすぐに広がり、そのなかで『それは責めすぎだ』という人が現れれば、今度は『そういうおまえこそ悪い!』と、新たな標的をつくっていくのです」

 

読者の多くが「私は正義中毒とは関係ない」と思うかもしれない。しかし中野さんは、現在8割の人が正義中毒化している、またはした経験があると考えているそう。

 

「年齢によるものもあるでしょう。加齢によって脳の前頭前野が萎縮すると、考え方が偏っていき、ますます人を許せなくなる傾向が強く表れるからです」

 

「昔はよかったのに……」「それは違う、○○に決まっているでしょ!」と、口にした覚えはないだろうか。

 

「脳の前頭前野は、分析的な思考や客観的な思考を促す部分です。ここが衰えると考え方が保守化して、『昔はよかった』に象徴されるような固定化された観念や偏見が強くなり、“許せない”感情へとつながっていきます」

 

“許せない”はつまり“脳の老化”でもあるのだ。ということは逆に、許せる人になることが老けない脳をつくる、ともいえないだろうか。

 

「脳の老化抑制のためには、『メタ認知』がカギをにぎります。メタ認知とは、自分を客観的に認知する機能のことで、脳の前頭前野の働きが保たれていることが必要となります」

 

そのためには、ふだんの習慣にないことを意識して行うのが効果的だという。

 

「たとえば、通勤や散歩のときにいつもと違う道順で歩いたり、食事のときにふだんはあまり使わない食材を使ったり、作らないメニューに挑戦してみる。在宅時間が増えているこの時期なら、ふだんは手に取らないジャンルの本を読んでみる。また、ネットでも、まったく関心のないキーワードを検索してみると、ふだん目にしないページと出合うことができます。日常のちょっとしたことでメタ認知を働かせ、前頭前野をきたえることはできるのです」

 

「女性自身」2020年4月28日号 掲載

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