介護保険を受けるのに必須な介護認定。介護度が1変わるだけでも受けられるサービスには大きな違いがあるのに、認定審査の“厳しさ”は住んでいる地域で差があるようでーー。
「公的介護保険は本来、あまねく提供される社会保障として『平等に受けられる』というのが基本的な考えのはずです。医療は、保険証があればだれでも受診できますが、介護保険サービスは、要支援や要介護に認定されなければ利用できません。公的サービスを受けるための大事な“入り口”である介護認定に、大きな地域差が出るのは、望ましいことではないと思います」
厚生労働省のデータをもとに編集部が作成した介護認定率の全国ランキング(※)を見て、こう分析するのは、介護施設のコンサルタントを請け負う「スターパートナーズ」代表の齋藤直路さんだ。
介護度は、要支援1〜2、要介護1〜5の7段階に分けられており、それぞれ利用できるサービス内容や利用上限額が変わってくる。ランキングは都道府県別に65歳以上の高齢者に占める要支援・要介護者数の割合で介護認定率を算出した。上位3県と下位3県は次のとおり。
■上位3県
【1位】和歌山県/介護認定率:21.8%
【2位】大阪府/介護認定率:21.7%
【3位】愛媛県/介護認定率:20.8%
■下位3県
【45位】山梨県/介護認定率:15.7%
【46位】茨城県/介護認定率:15.4%
【47位】埼玉県/介護認定率:15.3%
その結果、介護認定率がもっとも高い和歌山県と、最も低い埼玉県では6.5%、約1.4倍もの地域差が生じる結果となった。
「理由はいくつか考えられ、内閣府の調査では、65歳以上の高齢者のうち75歳以上の後期高齢者が占める割合が高い地域ほど認定率が高く、スポーツ振興やリハビリに力を入れる地域などは認定率が低く出ると分析されています」(齋藤さん・以下同)
つまり、ランキングで下位にきたからといって、一概に“介護認定が厳しい”“高齢者にやさしくない”地域とは言い切れない。しかし齋藤さんは続けてこう語る。
「ただ“財政”の問題も一つにあるかもしれません。介護保険の財源の半分は私たちが納める保険料ですが、残りの半分は国や都道府県、市区町村の負担です。財政が厳しく、介護にお金が回せない自治体ほど、介護認定を出しにくくなる可能性は、否定できません」
※厚生労働省「介護保険事業状況報告(暫定)令和2年1月分」をもとに作成。介護認定率は内閣府「要介護(要支援)認定率の地域差要因に関する分析」での計算方法を参考に、要支援1〜2と要介護1〜5の総数を第1次保険者数(65歳以上の人口)で割って算出。
「女性自身」2020年5月26日号 掲載