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「朝食後すぐ『昼メシ、何?』、昼ご飯を食べながら『夜は何?』と聞かれる毎日。しかも『またハンバーグ!?』って文句ばかり。もう疲れた!」

 

「主人は在宅でも、分刻みでオンライン会議。秘書のように空き時間にご飯を用意したり、音を出さないよう気をつけたり、毎日が苦行です」

 

テレワークが推奨され、夫の在宅時間が増える中、50代の専業主婦から、次々に不満の声が聞こえてくる。

 

自らの離婚経験を生かした夫婦問題コンサルタントであり、FP(ファイナンシャルプランナー)でもある寺門美和子さん(55)への相談は、自粛期間が始まってから、以前の約3倍に増えたそう。

 

「アルコール消毒の頻度、ソーシャルディスタンスの取り方など、コロナ禍の生活によって、夫婦間における感覚のズレが明確に。こうした日々の不満は、以前なら夫の留守中に、好きなテレビを見たり、ランチに行ったりすることで解消できましたが、今はそれもできません。コロナ禍の今は、妻にとって1年で最もきつい時期といわれるお正月が、何カ月も続いているようなもの。離婚のスイッチが入りやすくなっているんです」

 

ただし、勢いにまかせて離婚に走るのは危険だ。

 

「女性の平均寿命は87歳といわれていますが、実はもっとも死亡者数が多い年齢は92歳。仮に50歳で離婚したならば、42年の人生を、一人で歩む覚悟と準備が必要です」

 

あくまでも概算だが、25年連れ添ったサラリーマンの夫と52歳で離婚し、将来はサービス付き高齢者向け住宅に入居したい、専業主婦のA子さんの場合(※)を例に見てみよう。

 

【就職】52~64歳

月々の収入(給与12万円。〈60歳のとき、夫の退職金分与987万円〉)-月々の支出(消費支出16.1万円+家賃6.5万円=計22.6万円)×156カ月=期間合計約-667万円

 

【年金受給開始】65~81歳

月々の収入(基礎年金5.3万円+年金分割5.3万円+自分の厚生年金1.1万円=計11.7万円)-月々の支出(消費支出13万円+家賃6.5万円=計19.5万円)×204カ月=期間合計約-1,591万円

 

【サービス付き高齢者向け住宅に入居】82~92歳

月々の収入(基礎年金5.3万円+年金分割5.3万円+自分の厚生年金1.1万円=計11.7万円)-サービス付き高齢者向け住宅費用(19万円)×132カ月=期間合計約-964万円

 

【赤字額】3,222万円

夫の退職金の分与987万円を受け取っても、離婚後約3,222万円不足する。この不足分を自力で捻出するには、65歳までの13年間、厚生年金に加入し、月36万8,600円を稼ぐ必要がある。

 

「もちろん資産や生活レベル、住宅事情は各家庭で異なります。離婚後の人生をどのように送りたいのか、そのためにはいくら必要で、収入はどうするのか、綿密なライフプランをたてなければなりません」(寺門さん・以下同)

 

自分自身が、“離婚できる状況”なのかを確認する際に、考慮すべき項目を見てみよう。

 

【1】年金は意外ともらえない

 

離婚をしても、支払ってさえいれば、国民年金は夫婦それぞれが受給できる。「第3号被保険者」とされる会社員の妻が考えたいのは、「厚生年金の合意分割制度」だ。

 

「合意分割では、お互いの合意に基づき、婚姻期間中の厚生年金を最大5割まで分割することができます。しかし『婚姻期間に、妻としての支えがなかった』などを理由に、分割の割合が4割に満たないケースもあります。国が定めたモデル世帯(夫婦の年金受給額が月22万円)であっても、離婚後に妻がもらえる年金は、最大9万5,000円ほどでしょう」

 

会社員妻が厚生年金の半額を確実に得られる「3号分割制度」は、婚姻期間のうち、’08年4月1日以降のみが分割対象。そのため婚姻期間が長い50代には不向きであるケースが多い。また、年金分割ができるのはあくまでも厚生年金のみ。自営業の妻は対象外だ。

 

「それまで年金保険料が実質ゼロだった会社員の妻も、離婚後は保険料の支払い義務が発生します。国民年金の保険料は月に1万6,540円。少ない額ではありません」

 

【2】離婚後はどこに住む?

 

「この年齢で離婚する場合、夫が家を手放したくないケースも多いです。また、家を受け取れる場合も、ローンが残っていなければシンプルですが、残債があると面倒。ローンは名義変更できないため、夫名義の場合は、残金を借り換える必要があります。ところが、収入が不安定な専業主婦のローン審査は通らない場合が多く、通ったとしても金利が高く設定される傾向があります」

 

夫の同意を得て家を売り、経費を差し引いた現金を等分に分けるという手もあるが……。

 

「賃貸暮らしをする場合、住まいのレベルダウンは避けられません。しかも都心だと、ワンルームでも家賃は7万~8万円かかるので、便利な生活をあきらめて郊外に引っ越す人も多い。たとえ実家に戻っても、そこで親きょうだいとの同居となると、夫との生活よりストレスがたまることもあります」

 

【3】義父母の遺産はもらえない

 

夫が親から相続した遺産が、財産分与の対象になると期待している人は要注意だ。義父母の遺産は、財産分与の対象にはならない。

 

「逆に、自身にまとまった遺産が入り“一生暮らしていける”と離婚を決意する人がいます。しかしライフプランを立てなかった結果、3,000万円を20年で使い果たし、路頭に迷うケースもありました」

 

【4】退職金分与には注意が必要

 

近い将来、夫が受け取る退職金に関しては、婚姻期間に応じて分与される可能性が高い。しかし中には注意が必要な事例も。

 

「夫の定年がかなり先のことであったり、退職金として確定拠出年金を積み立てていたりする場合は、夫の退職金の金額が確定していないとされ、財産分与の対象になりにくくなります」

 

その離婚、本当に大丈夫? 後悔しないために今一度、冷静にライフプランを立ててみよう。

 

※月々の消費支出は「2019年 家計調査 家計収支編 単身世帯 詳細結果表」〈総務省統計局〉より、各年代の消費支出から住宅費を差し引き算出。基礎年金は「平成30年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」〈厚生労働省年金局〉、サ高住費用はスターパートナーズ算出資料を参考に本誌が作成。

 

「女性自身」2020年8月18日・25日合併号 掲載

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