■特別養護老人ホームに入居した場合
70歳のときに、骨粗しょう症の診断を受けていたBさん。通院によって状態を維持していたが、78歳で転倒し大腿骨頸部を骨折。入院し、人工骨頭置換術を受け無事に退院したが、79歳でもう一度同じ部位を骨折。骨の強度からもう手術はできず、ほとんど寝たきりになり、要介護3に認定された。家族は離れて暮らしているため、安価で看取りまでしてくれる地元の特別養護老人ホームを希望。地域包括ケア病棟で待っていると運よく入院中に入所の運びとなった。所得に応じて利用額が変わるが、ごく一般的な収入だったため、4段階中3番目の料金設定で、多床室を利用。入所後、徐々に介護度は上がっていくも経口で食事を摂取し続け、87歳で要介護4。90歳で要介護5となり、施設で看取ってもらった。
〈試算〉
【80〜86歳】要介護3
・介護費用:3万円
・居住費:4万円
・食費:2万円
・その他(金銭管理費等):5,000円
・合計(月額):9万5,000円
・年金からの余剰金(月額):3万3,000円
【87〜89歳】要介護4
・介護費用:3万3,000円
・居住費:4万円
・食費:2万円
・その他(金銭管理費等):5,000円
・合計(月額):9万8,000円
・年金からの余剰金(月額):3万円
【90〜92歳】要介護5
・介護費用:3万5,000円
・居住費:4万円
・食費:2万円
・その他(金銭管理費等):5,000円
・合計(月額):10万円
・年金からの余剰金(月額):2万8,000円
◎13年間で486万円余る(総費用1,510万8,000円/年金総額1,996万8,000円)
■サービス付き高齢者向け住宅に入居した場合
要支援2だったCさん。長年連れ添った夫を失い、外出する機会がめっきり減って一気に衰えた。Cさんの一人暮らしに不安を覚えた娘が、「人とのコミュニケーションがとれるから」と施設の入居を勧めた。運よく、昔から仲のよかった友人が近くのサービス付き高齢者向け住宅に入っていることを知り、80歳になったときに入居。加齢にともない、訪問介護で身の回りの介助を受けるようになったが、同世代の友人もできて楽しく暮らしており、92歳で亡くなった。
〈試算〉
・入居金:21万円
【80〜86歳】要支援2
・介護費用:7,000円
・居住費:10万5,000円
・食費:4万5,000円
・状況把握、生活相談:1万1,000円
・合計(月額):16万8,000円
・年金のみの不足額(月額):4万円
【87〜92歳】要介護2
・介護費用:1万5,000円
・居住費:10万5,000円
・食費:4万5,000円
・状況把握、生活相談:1万1,000円
・合計(月額):17万6,000円
・年金のみの不足額(月額):4万8,000円
◎13年間で702万6,000円不足(総費用2,699万4,000円/年金総額1,996万8,000円)
施設の居住費は地域によって異なる。都心の高齢者向け住宅には、月額の利用料が数十万円以上するものもある。今回の施設に関する試算はすべて、地方都市の平均的な相場を念頭に試算した。