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日々、ついついためてしまいがちなストレス。2度目の緊急事態宣言の発出下とあって、その傾向もいっそう顕著に。その改善のカギは、1日の始まりをどう過ごすかにかかっていると専門家は指摘するーー。

 

「脳は体の状態や動きから、自分の現状を判断します。体から『楽しい』という信号が脳に送られてくると、脳は『自分は楽しい、元気なんだ』と判断するのです。元気になるような行動をとれば、心も元気になる。上手に“脳を騙(だま)す”アクションをすることがストレス対策には大切なのです」

 

そう教えてくれたのは、明治大学教授で言語学者の堀田秀吾先生。心理学や脳科学でも、思考と行動では行動のほうが先に来ることが定説になってきているそう。すなわち、心が元気でないから体を動かせないのではなく、体を動かさないから心が元気になれない、と堀田先生は話す。脳を騙すためには、科学的に実証された裏付けのあるワザ“エビデンス有り”のテクニックが有効だという。

 

「特に朝は“ストレスホルモン”と呼ばれるコルチゾールの値が1日のうちもっとも高いことがわかっています。起床時に体がダルくて憂鬱な気分になるのは、高いストレス状態にあるため。1日を幸せに過ごすためには、朝からきちんとコルチゾールの値を下げて、不安や心配を取り除いておくことが肝心です」(堀田先生・以下同)

 

コロナ禍でどうしてもストレスはたまりがち。そんな多くの人が抱える悩みを改善するのに有効な“朝の過ごし方のコツ”を堀田先生に教わり、科学的に立証されたメカニズムも解説してもらった。

 

【1】起床時に楽しい記憶を思い出す

 

1年間、14歳の若者427人を対象に、目覚めたときポジティブな記憶とネガティブな記憶を思い出し、1分後に反応を調べる実験を6回行ったところ、ポジティブな記憶を思い出した被験者は“ストレスホルモン”であるコルチゾールの値が減少(※ケンブリッジ大学 アスケルンドらの研究)。

 

「毎朝楽しかったエピソードを1分間思い出すと、コルチゾールの値がダウン。長期的にもポジティブ思考が習慣化され、うつ病対策にもつながります」

 

【2】軽く汗をかく程度の運動をする

 

被験者をジョギングまたはストレッチを行うグループに分け、30分実行した後に涙を誘う映画を見せると、悲しい気持ちのリカバリーはジョギングをしたグループのほうが早かった。覚醒、気分、記憶、自律神経調節などと関係するセロトニンの受容体が活性化していた(※東京大学 リューらの研究)。

 

走るときに一歩一歩、頭部に衝撃がかかることで、脳内物質が活性化。気分が晴れないときはジョギングが◎。継続すれば、自律神経の乱れも改善して、心身ともに元気になるのだそう。

 

【3】40度のおふろに10分入る

 

摂氏40度のおふろに入ったり、シャワーを浴びたり、ミストサウナに入った後に課題をさせる実験を朝7時から数時間ごとに実行したところ、おふろに入ったグループは課題の正答数が向上。注意力や判断力を高め、その後も疲れにくくなるという結果も得られた(※千葉大学 リーらの研究)。

 

「シャワーを1分間浴びるだけでも効果があります」

 

【4】身だしなみを整える

 

20代の女性24人にメークをすると、自尊心や自己満足度が高くなり、プロに化粧を施されると不安感が減り、声のトーンが高くなったそう。大学生15人の爪にマニキュアを塗り、感情の変化を調べると、緊張、疲労、落ち込みなどが若干減少することも実証されている(※同志社大学 余語ら、京都大学 平松らの研究)。

 

化粧をすると自己肯定感が高くなり、化粧後の自分の姿を見ることで脳波が安定する。マニキュアを塗る、爪を磨くなどもリラックス効果につながる。

 

「誰かに見せるためではなく、自分の心に余裕をもたせるためにも、身だしなみを整えることは重要です」

 

【5】あいさつをする

 

複数の高校のスクールバスで、運転士が「こんにちは」「さようなら」などのあいさつをしたときの生徒たちの反応を調べると、あいさつをする生徒が以前の約40倍に増加した。あいさつは好意の印でもあり、良好な人間関係を構築する有効な手段だと判明した(※カンザス大学 エドワーズとジョンストンの研究)。

 

人類が進化の過程で編み出した、敵味方を区別するための手段こそあいさつ。「この人はあいさつしてくれるから味方だ」と相手に思わせ、好意の返報性効果により「いい人だな」と思われる。あいさつは良好な人間関係を構築し、みんなの気分をよくするための有効な方法だ。

 

【6】鏡に向かって作り笑顔をする

 

被験者にさまざまな形で箸をくわえてもらい、心拍数やストレスの度合いを計測。唇が箸に触れないように歯と歯で横向きにくわえ、口角が上がり大きな笑顔になるグループでは心拍数やストレスが最も低くなった。笑うことが「楽しい」「幸せ」な気分を導く結果に(※カンザス大学 クラフトとプレスマンの研究)。

 

「日常の些細な時間での“フェイクスマイル”を心掛けていると、ストレスが軽減します。自分だけではなく、笑顔の人を見たまわりの人たちもハッピーに。ただし、感情的なシーンのフェイクスマイルは逆効果にもなるのでご注意を」

 

朝の忙しい時間でも取り入れられそうな“チョイワザ”ばかりだ。

 

「肩に力を入れず、これならできそうと思った項目をとりあえず試していけばOKです。気に入ったものを継続して実践してください」

 

科学の力を借りて、今年はストレス知らずで過ごそう!

 

「女性自身」2021年2月2日号 掲載

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