男性と比べて平均寿命が約6年も長い女性にとって、夫の死後の人生をどう生きていくのか、というのは避けては通れない問題です。いずれ来る「その時」を乗り越えるためにきっちり備えておきましょうーー。
■夫の葬儀や告別式に手間をかけたくない!
最近は「葬儀に費用や手間をかけたくない」と考える人が増え、近親者だけで行う「家族葬」や納棺してすぐに火葬する「直葬」が注目されている。
ところが、葬儀・お墓・終活ビジネスコンサルタントの吉川美津子さんは、葬儀や告別式を行って関係者に集まってもらったほうが、逆に妻の負担が減る場合があると話す。
「その場でまとめて弔問客の対応を行えるからです。家族葬や直葬では、夫の死後の手続きで多忙な時期に、さみだれ式にお悔やみの電話がかかってきたり、香典が送られてきたりすることも。そうした対応を、葬儀や告別式の場で終わらせておいたほうが、結果として楽になることも」
また、葬儀では集まった親族が弔問客の対応を分担して手伝ってくれるメリットもある。年をとると、香典の整理といった細かい作業をひとりで行うのは骨が折れるもの。葬儀は、助けてくれる人が大勢集まる場と捉えてみては。
「訃報を連絡すべき人の連絡先は、日ごろから把握しておきましょう。年賀状はそのヒントになるかもしれません。年賀状の慣習が薄れつつあるこのご時世でもやりとりが続いている人は、お互いにつながりを大事にしている相手と考えられますから」
四十九日の忌明け後には、夫の遺品を親族や親しい友人と分け合う「形見分け」を行う場合もあるが、相続権のない人に遺品を渡すことは「贈与」にあたる。110万円以上の高額なものは受け取った相手に贈与税がかかってしまうので注意したい。
■夫が死んだのを機に義父母とは縁を切りたい!
これまでの結婚生活、義父母とはソリが合わず、とくに姑からは過剰な干渉を受け苦しんできた。夫が死んだ後はもう関わりたくないけれど、介護を頼られたらどうしよう……。こんな不安を抱える人に向けて、相続に詳しい弁護士の竹内亮さんはこう解説する。
「法律上の親子ではない義父母に対する扶養義務は、基本的にありません。つまり、生活を金銭的にサポートする法的な義務はないので、義理の両親の面倒をみるかどうかは、結局のところ自身の判断次第なのです。厳密にいえば、民法上、特別の事情があるときは、家庭裁判所の判断によりお嫁さんにも扶養の義務を負わせることができるのですが、実際にあてはまるケースは限られており、事実上、扶養義務はほとんどないといえるでしょう」
それでも法的に“縁を切る”ことにこだわるなら、「姻族関係終了届」という手段も。姻族とは、婚姻によってつながった配偶者の血縁者のことで、義父母や義きょうだいがそれに当たる。姻族関係終了届に姻族の同意は必要なく、妻自身が役所に提出するだけで法的な親戚関係を終了できるのだ。
「姻族関係が続けば、義父母が認知症になったときに成年後見の申立て人になったり、また、病院で手術の同意をするような場面もありえます。ただ、これはお嫁さんの『権利』であり、使いたくなければ使わなくてもいいのです。このように実際に姻族関係終了届を出しても、法的な視点ではあまり変化はありません。あくまで、気持ちの問題といえるのではないでしょうか」(竹内さん)
「女性自身」2021年3月2日号 掲載