「梅雨の期間が長引けば、雨量が増え、日照時間が短くなる。すると野菜が順調に育たず、価格の高騰につながります。今年は全国的に早い梅雨入りが発表されたことで、早くも野菜の値上がりが懸念されているのです」
そう語るのは、生活経済ジャーナリストの柏木理佳さん。
日常的に使う野菜の値上がりは、家計を直撃する。だが、梅雨が長引けば長引くほど、野菜の価格の高騰はまぬがれない。自治体のさまざまなデータを基に、住みやすさや災害リスクなどの分析・評価をおこなっている、住環境コンサルタントの堀越謙一さんは、以下のように分析する。
「今年は、近畿地方では観測史上もっとも早く梅雨入りが確認されました。過去にさかのぼって、近畿地方の梅雨が長引いた年を調べてみると、九州を中心に河川の氾濫や土砂崩れなどの水害が発生しているケースが多く見られます。これは、同地域の野菜の“不作”に直結しています」
過去20年、近畿地方で長い梅雨(8月以降の梅雨明け)は3回あったというがーー。
「まずは直近の’20年。梅雨時期の降水量は平年比174%でした。長梅雨で寒冷前線が停滞したため、九州・中部地方が記録的な豪雨に見舞われ、時間あたりの降水量は各地で過去最大を記録しました。’09年は中国・九州北部豪雨が発生。激甚災害に指定することが閣議決定されたほどです。そして’03年は、九州地方や西日本にかけての広い地域で、200ミリ以上の大雨を記録。これらすべての年で、水害地域における不作により、夏場に野菜が高騰しているというデータがあります」
梅雨の影響は早くも出はじめている、と前出の柏木さんは語る。
「東京では、5月中旬に比べ、下旬のきゅうりの販売価格が2倍近くにまで上がっています」
また、5月におけるレタスとブロッコリーも、卸売価格の推移を見てみると、中旬から下旬にかけて、急激に値上がりしている。
長梅雨が懸念される今夏、野菜価格の動向はぜひ注視したいところ。柏木さんに、主な野菜の現在の価格動向と、過去のデータを基に今後の予測を立ててもらった。
【なす】
「全国的に5月20日ごろから卸売価格が上昇しています。東京でも卸値がキロあたり372円(5月20日)が456円(同27日)と、20%以上値上がり。生産地である高知県の天候不良が原因と思われ、平年並みに落ち着くことが期待されますが、昨年8月は、卸値が平年の2倍近くまで上昇した日もありました」(柏木さん)
【じゃがいも】
「産地である北海道の貯蔵量が減り、九州の鹿児島では昨年の豪雨で生育が遅れたことなどから、じゃがいも(ばれいしょ)は5月の小売価格が平均より1.4倍ほど高くなっています。昨年も、小売値が平年比の1.5倍前後まで上昇していますので、長梅雨の影響も心配されるところです」(柏木さん)
仮に長梅雨となれば、こうした野菜が高騰していくため、準備が必要だと柏木さんは続ける。
「安い野菜を見つけたら、買っておくこと。日もちさせるために、ピクルスや漬け物にするのもいいでしょう。工場で生産するため、天候に左右されず価格が安定している、もやしやきのこなどの食材を利用することもおすすめです」
次にまとめたのは、野菜を長持ちさせるための冷凍保存術。教えてくれたのは、『野菜のおいしい冷凍・解凍』(毎日新聞出版)などの著書がある、料理研究家でラク家事アドバイザーの島本美由紀さんだ。急激な高騰への対抗策として、いまのうちに知っておこう。
【きゅうり】
「薄い輪切りにして塩少々でもみ、水を絞りましょう。保存期間の目安は1カ月。丸ごと冷凍しても、5分ほど常温に戻しておくと、普通に千切りやすりおろしにできるので、冷やし中華にのせるのもよいですよ」(島本さん・以下同)
【ブロッコリー】
「常温保存に比べて、冷凍によってβカロテンが増すというデータも。房は小さく切り分けて、保存袋に入れれば、保存期間は1カ月ほど。茎も皮をむいて薄切りにしておくと便利。スープの具材にする場合は、解凍せずに調理できます」
【レタス】
「洗ったレタスを、ひと口大にちぎって、キッチンペーパーなどで水分を取り、保存袋へ。1カ月ほど保存できますが、生食はおすすめできません。スープや炒め物に入れるなど、加熱して食べてください」
【ねぎ】
「白い部分は小口切り、斜め切りなどにして保存袋に入れましょう。青い部分はラップに包んで。どちらも1カ月ほど保存ができます。薬味の小口切りのねぎは、凍ったまま味噌汁に入れてもOKです」
また、スーパーなどで販売されている冷凍野菜は価格が安定しているそう。生野菜ではなく、そちらを選ぶのも手だろう。