「毎日、家計のやりくりに苦労していたので、退職金という大きなお金を手にした途端、舞い上がって、衝動買いをしてしまったという話をよく聞きます。旅行や買い物など自分たちへの“ごほうび”は最低限にして、将来、介護や病気になったときや、年金の不足分を補うために備えておかないと、老後貧乏に陥ってしまいます。年金はいつからいくら受け取り、退職金はいつもらい、それらをどう取り崩し、その間、どのような働き方をするかといった、トータルなライフプランを決めておくことをおすすめします」
そう語るのは、ファイナンシャルプランナーの山中伸枝さん。
会社では退職前にセミナーなどで教えてくれるかもしれないが、税金や年金の制度に関して、個人のケースに応じて、どんな受け取り方をすると損か得か、ということまでは教えてくれない。
特に、会社員は「3階建て」とされる日本の年金制度の3階部分にあたる「企業年金」に加入している人が多く、この企業年金の受け取り方や受け取る時期を間違えると、思わぬ損失につながる。
「企業年金は一時金、年金払いと受け取り方法が2通りあり、年金払いで受け取った場合には、その所得を雑所得として公的年金と合算して税金の計算をします。公的年金や企業年金については、公的年金等控除枠があり、これを超えた分が課税対象となります」(山中さん・以下同)
64歳までは年間60万円まで、65歳以降は110万円までが非課税になる。さらに、国民健康保険料の計算に影響するので、国保や介護保険料の負担も大きくなる。
「年金形式ではなく、一括で受け取ると退職金の扱いになり、税金の負担を軽減するための大きな控除が使えます。計算式がややこしいのですが、退職前に、退職金や企業年金を一時金で受け取ると、税金はいくらになるのか、計算しておくことをおすすめします」
■まずは、退職所得控除の計算から始めよう!
それが、次の退職所得控除額の計算式。
〈退職所得の計算方法〉
退職所得の金額=(退職収入金額−退職所得控除額)×1/2
〈退職所得控除額の計算方法〉
勤続年数20年以下・退職所得控除額:40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
勤続年数20年超・退職所得控除額:800万円+70万円×(勤続年数−20年)
※勤続年数が1年未満の端数は切り上げる
たとえば、勤続年数が38年の人は800万円+70万円×(勤続年数−20年)で、2,060万円が退職所得控除額になる。勤続年数が20年以下の人は、勤続年数に40万円をかけた金額が、退職所得控除額となる。退職金が控除額以下であれば、税負担はないが、それを上回ると税金がかかる。
そして、問題はここから。
「企業年金には、確定給付企業年金(DB)や企業型の確定拠出年金(DC)があり、時期をずらして受け取ると、退職所得控除が使えなくなるケースが。その分、多くの税金を支払う恐れが出てきます」
そこで、山中さんに〈退職金・企業年金の受け取るときのベストプラン〉を教えてもらった。
夫婦の間で、退職金のもらい方について話をする機会はなかなかないと思うが「知らなかった!」では済まされない。今から、しっかりと確認しておこう。