【ケース2】離婚約で夫が改心し、子育てや家事も積極的に。離婚約解消の可能性も
F・Aさん(48歳・医療関係勤務)
離婚約期間:2年
離婚約をしたのは、夫が海外での単身赴任から帰ってきたのがきっかけでした。それまでの2年間で私と2人の子どもたちの3人での生活ができあがっていたところに、家族で過ごすことを楽しみに帰国した夫とのテンションの差を感じたことや生活リズムが崩れたことから、イライラするようになってしまって。
夫からのセックスの誘いも全く受け付けられず、断っても断っても毎日のように求めてくるのも生理的に無理でした。
でも今思えば、そのいらだちはそのころ始まったことではなく、子どもが小さいころにワンオペ育児の大変さや教育上の心配事を相談しても、全部決断は私任せだった夫への不満の積み重ねも、夫婦のずれの大きな要因でした。
息子が大学に入る2年後に離婚したいと考えていると伝えたら、夫はとてもショックを受けたようで、そのときはわかったと言っていましたが、それから改心。私が何も言わなくても子どもの塾や習い事の送迎、お風呂掃除、週末の料理などを積極的にするようになりました。信頼回復に頑張っている夫の姿を見て、ちょっとかわいそうだなと揺れ動くことも正直あります。
私自身、老後に一人は寂しいのかなと思う気持ちもあります。でも先日父が亡くなり母が号泣している姿を見て、私は夫が死んでもこうはならないと思い、複雑な気持ちでした。
もうしばらく様子を見て、どちらになっても幸せになれるよう、準備しようと思っています。
〈“夫婦の時間”で見えたもの〉夫の改心で夫婦関係修復の可能性も出てきて、人生で何が大事か考えるきっかけに。
■別れるまでの猶予があるからこそ完璧にしておきたい離婚準備
「離婚約は法律で守られている契約ではないので、将来離婚する際、妻が不利になることのないように進めることが大事です」
と話すのは弁護士の山下環先生。
「離婚約中に、養育費や財産分与についてきちんと決めること。ちゃんと支払われるか心配ならば、実際に離婚すると決めた時点で、約束事を『公正証書』に残すとよいでしょう。公正証書は、約束した金銭の支払いが履行されないとき、裁判の判決を待たなくても、支払い義務者の給与や財産を差し押さえる強制執行を可能とします。また、相手に不貞行為の可能性があるなら、証拠を探しておいたほうがいいでしょう。できたら離婚約に至る前に浮気の証拠を確保すること。離婚約を交わした後に証拠を見つけても、『浮気の事実を知らなくても離婚するつもりだったよね?』と開き直られ、不貞行為が離婚原因としてみなされない可能性もあります」(山下先生・以下同)
証拠があれば、離婚約は夫の浮気が原因と認められ、離婚の際、不貞行為の慰謝料を請求できることも。
「今、離婚約が認識され、じわじわと離婚約をする夫婦が増えています。思い出に夫婦でバンジージャンプをしたり、滝行をしたりと、お互い次のステップに向け何か記念になるイベントをする人も。離婚約は夫婦の関係が行き詰まったとき、今の時代の選択肢のひとつなのかなと思います」
離婚約は、夫婦関係を見つめ直す執行猶予期間。家族のためだけではなく、自分の人生がどうありたいかを考える、前向きな期間なのだ。