子も独立し、足腰も弱くなったので、あまり行かなくなった2階。老後のために、いっそ“減築”してみてはいかが? あえて部屋を減らすと、さまざまなメリットがーー。
内閣府『令和3年版高齢社会白書』によると、’19年、65歳以上の人がいる世帯数は、2,558万4,000世帯で、全世帯数(5,178万5,000世帯)の49.4%を占めている。このうち、65歳以上の夫婦のみ世帯と単身世帯が1,563万9,000世帯と、全体の約6割を占めていて、年々増え続けているという。
国土交通省『住生活総合調査』(’18年)のデータによると、今後も現住所に「できれば住み続けたい」と答えた65歳以上の夫婦世帯は75.2%。65歳以上の単身者は69.7%。多くの人が、住み慣れたわが家に住み続けたいと考えているのだ。
そんなニーズから生まれた“減築リフォーム”がいま注目を集めている。
「依頼件数は年々増えております。老後の生活を見据えた方が半数以上を占めていて、年齢層は50〜60代が中心で、とくに60代の方からの相談が多い。築年数は20年以上の家が多いですね」
そう語るのは、リフォーム会社の紹介サイトで、利用者数、見積依頼件数が業界1位の「リショップナビ」事業責任者の石塚雄さん。
「注文内容は、2階建てを平屋にしたいという相談が約50%。そのほかには、不要になった子ども部屋を減らしたり、ご自宅の北側にある部屋を解体して倉庫にしたいなど、さまざまな相談が寄せられています」
同社を通じた、減築リフォームの依頼件数は、過去5年間で約10倍も増えたという。
■泥棒の侵入経路を減らす効果も
どんなメリットがあって、わざわざ部屋を“減らす”のだろう。
「掃除や家のメンテナンスといった“管理の手間を減らしたい”という理由がいちばん多いですね。それに加えて、耐震化やバリアフリー化も要因となっています」
部屋数や外壁の面積が減ることで、掃除や定期メンテナンスが楽になる。さらに、2階をなくすことで、階段の上り下りの危険もなくなるし、家全体が軽くなることで、耐震性も向上する。ほかにもこんなメリットが。
【固定資産税が軽減】
固定資産税評価額は、土地や建物の延べ床面積の合計によって決まる。床面積が減れば、評価額が下がるので固定資産税が安くなる。
【光熱費の削減】
不要な部屋が減れば、冷暖房の効率も上がる。さらに減築で風通しをよくしたり、採光の改善をすることで、光熱費も抑えられる。
【防犯性の向上】
大きな家の場合、明らかに使われていない、人気のない部屋は空き巣にも狙われやすく、侵入されても気づきにくい。無防備な部屋をなくすことで防犯性が向上する。
さまざまなメリットがある減築リフォーム。気になるのは、そのお値段だ。
石塚さんによると、2階建てを平屋にする場合、バリアフリー化などの追加オプションの注文内容によって費用は異なるが、大体500万円ぐらいかかるそうだ。
■減築リフォームのお値段は?
〈平屋の一部や2階の一部屋を減築する〉:4〜5坪の減築・110万〜380万円/6〜21坪の減築・400万〜700万円
〈1階の天井を吹き抜けにする〉:100万〜500万円
〈2階建てを平屋に減築する〉:450万〜2,700万円
〈不要な部屋をビルトインガレージにする〉:60万〜240万円
〈減築後、庭に駐車スペースを作る〉:300万〜690万円
〈減築を伴うフルリフォーム〉:600万〜3,000万円
※「リショップナビ」ホームページより本誌作成
決して、安い金額ではないが、一から建て替えるのと比べれば、費用は大きく抑えられる。
老後に備えて、“便利・安全”で“節約”にもなる、減築リフォームという選択肢があるのを忘れないで!