「結婚、出産、育児と同じように、介護も“ライフステージの一つ”と考えるといいと思います。介護は自分1人で抱え込まずに、上手にプロの助けを借りることが大切。“おトク”な行政のサービスはフル活用したいですね」
そう語るのは、お笑いコンビ・メイプル超合金の安藤なつさん。芸能界で活躍する彼女だが、ヘルパー2級の資格の持ち主でもある。じつに20年にわたり介護の現場に携わってきた。2月25日には、安藤さんと介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんの共著『知っトク介護 弱った親と自分を守る お金とおトクなサービス超入門』(KADOKAWA)が発売予定だ。
安藤さんと介護との出合いは、中学時代に遡る。
「伯父が小規模の介護施設を運営していて、週末に手伝っていたんです。おむつ交換のほか、トイレ・入浴・食事の介助などをしていましたが、お手伝い感覚だったので『介護は大変』という先入観なく、介護業界に足を踏み入れました」(安藤さん・以下同)
いまも介護に携わり続ける背景には、施設の利用者との心のふれあいがあった。
「中学生のころ、日曜になると介護施設で認知症のおばあちゃんの着替えの手伝いをしていました。でも、なかなか着替えてもらえず、ようやく脱いだパジャマをまた着ていたり……。さすがに『もうムリ』と思い始めていました。ところがある日、私のことを認識してくれたのか、パッと着替えてくれて。心が通い合ったという感じがしてとてもうれしかった。介護は大変なことも多いですが、喜びもあると教わった瞬間でした。ヘルパーの資格を取った後に夜間の訪問介護でトイレのお手伝いをしていたおじいちゃんから、折り鶴をプレゼントしてもらったのも忘れられない思い出です」
もちろん、厳しい現実を目の当たりにすることも。
「介護を受ける人の洋服が何日も取り換えられていなかったり、ちゃんとお風呂に入れてもらってないのではないかと思うこともありました。介護する人の負担が家族の1人に集中していて、時間やお金、精神的な余裕がない、というケースも少なくないと思います」
現場を見続けてきた安藤さんだからこそ、“頼れる専門家”の知恵と“使える制度”には十分に頼ってほしいと話す。
「介護はチーム戦。共同作業、分担してやれるということを知ってほしいです。ケアマネジャーや介護福祉士など介護のプロとチームを組んでケアをしていきます。いつまで続くかわからない介護を1人でやれといわれたら、重たすぎますから。親も子もお互いの生活をきちんと確保することが何より大切です」