《自分が亡くなったときは、遺骨を海にまいてほしい》と考える人が増えてきているという。そんな「散骨」に必要な費用や手続きはどうなっているのか、専門家に聞いたーー。
4月17日、神奈川県・葉山沖で、作家で元東京都知事の石原慎太郎さん(享年89)の「海洋散骨式」が営まれた。
「一緒に見送ってくれた海の友達がいて、本当におやじにとってよい場所だったんだろうなと」
次男でタレントの石原良純さん(60)は、散骨は故人の希望であったことを明かし、父親の遺言をかなえた心境をそう語っていた。
そもそも散骨とは、《死者の遺骨を粉にして海や山へまく葬礼》(広辞苑第七版)と定義されている自然葬のこと。現在その多くが“海洋散骨”だと言われている。
「石原さんのように、ご自分が亡くなったときに、散骨を希望されるという方は年々増加しています」
このように語るのは、全国45社の散骨事業者が加盟する、一般社団法人日本海洋散骨協会副理事長の中田真寛さん。
昨年、同協会に加盟する事業者が行った年間の散骨施行件数は、1,709件。毎年200件以上も増え続けているという。
同じ自然葬である樹木葬の場合、樹木や植物を墓標の代わりにして土中に遺骨を埋葬するので、「墓地、埋葬等に関する法律」が適用される。樹木葬は法律で許可された寺院や霊園でのみ行われるため、イメージはお墓に近い。
同じ自然葬でも埋めるかまくかで、決定的な違いがあるのだ。
では利用者が増え続けている散骨は、どのように行われているのか。ルールやマナー、法律上の問題はないのかなど、わからないことも多い。そこで前出の中田さんに、散骨にまつわる疑問をQ&A方式で解説してもらった。
【Q1】どんな人が希望するの?
「海洋散骨の場合、石原さんのように“海が好き”という方がもっとも多いです。次に、一人住まい、跡継ぎがいないなどといった社会的な事情から散骨を希望される方も増えています。自分が亡くなったあとに、眠る場所の受け皿として海を選ばれているのです」(中田さん・以下同)
また、残された遺族に墓の管理などで手間をかけさせたくないといった理由から、お墓を選ばないという人もいるそう。
「お墓を持つことで生じる、“お寺とのつながり”を嫌がる人が増えています。先祖代々のお寺の檀家にならないといけないのなら、いっそのことお墓に入りたくないと考えるようです」
【Q2】散骨はどこで行うの?
「当協会に加盟する事業者は、海でのみ散骨を行っております。河川、滝、干潟、河口付近、ダム、湖や沼地など、飲み水に関わる水源池では行いません。山に関しても、国有林があるほか、多くは個人が所有しています。そこで散骨した場合、不法投棄となる可能性があったり、風評被害が生まれてしまうこともあるため、山でも行っておりません」
現在、散骨に関する法律はないことから、日本海洋散骨協会では独自のガイドラインを策定している。
海をなりわいとする関係者とのトラブルの防止、海の環境保全、散骨時の安全確保のためのルールとマナーを整備して、節度ある海洋散骨に努めているそうだ。
「細かく砕かれていない遺骨が海岸に流れ着いて、“事件性がある”と騒動になることのないよう、1〜2ミリ程度の粉末にする決まりを設けています」
【Q3】散骨したい海域は選べる?
「選べます。たとえば当協会は全国に加盟店があるので、その海域に合った事業者に相談していただくのが一般的です。必ず希望がかなうわけではありませんが、事業者が調べて対応します」
ハワイなど海外での散骨に対応できる事業者もあるそうだ。