■地価も、都市計画税も安いが……
市街化調整区域の開発が一気に加速したのは、2000年ごろからだと語るのは、長岡技術科学大学准教授の松川寿也さんだ。
「1999年の地方分権一括法により、都市計画を含め、まちづくりのルールは、国から地方へ委ねられるようになりました。その一環で、2000年に都市計画法が改正され、自治体の条例で市街化調整区域に新たな宅地を建てることも可能になったのです」
地方の権限を強めることで、地域の実情に即した開発ができるようになったが、負の作用もあった。
「少子高齢化が進むような地方都市の中には、人口流出で税収に苦しむケースも少なくありません。人口流入を促せば、税収も確保できる。そこで注目されたのが、市街化調整区域の宅地開発です」
住む側にはこんなメリットがあるという。
「市街化地域に比べ、土地も広く活用でき、地価が安い。自治体によって都市計画税の算出方法は違いますが、市街化調整区域は安価で、地域によってはゼロというケースもあります」
不動産業者も新たなビジネスチャンスとして捉え、市街化調整区域の宅地を専門とした業者も存在するという。一見、自治体にも住民にもいい傾向に思えるが、水害に対して脆弱な地域が宅地化されてしまうこともあるという。
「市街化調整区域だからといって、必ずしも浸水リスクが高いというわけではありません。ただ、水田や農地がある市街化調整区域は低い場所のため、水害のリスクは高い傾向にあるのです」
NHKの調査によると、この20年間で増えた“浸水地域”の人口のうち、埼玉県は約83%にあたる190,611人が、茨城県は約69%にあたる14,709人が市街化調整区域に住む人だという。
2000年以降に宅地開発された新興住宅地などに住む人は、今一度、災害リスクなどを調べてみる必要がありそうだ。