■なぜそんなに安く建てられるのか?
「終の棲家を見つけられない、といった社会課題を解決するためにも、車を買うぐらいの金額で、より多くの人に家を提供したいと考えています。
将来的には『100㎡、3LDKで300万円』を目標にしています」
そもそも、どうしてそんなに安く家が建てられるのか。
「施工時間の短さが重要なポイントです。通常、家を建てるのには半年ほどの時間を要します。つまり180日間、人間が現場に通い作業すれば、それだけの人件費がかかることに。 でも、3Dプリンター住宅は24時間施工を前提としているので、1日8時間作業としても、3日分の人件費で済む。そこがコストパフォーマンスに大きな差が出る要因です」
耐久性はどうなのだろうか。
特に、地震などの災害が多発傾向にある昨今の日本。
“安かろう悪かろう”な家では、おちおち暮らしてなどいられないのではないか……。
■世界一厳しい耐震基準もクリア
「素材はコンクリートに特殊な硬化剤などを混ぜたものです。
そのうえ、Sphereやフジツボ モデルはしっかりと鉄筋の入ったRC造ですから、普通に暮らせば70年は持ちます。
さらに、日本でトップクラスの構造設計の専門家にもプロジェクトに参加してもらっており、世界一厳しい日本の耐震基準もクリア。
データ上のシミュレーションでは震度7の揺れも大丈夫です」
電気&ガス料金が爆上がり中だけに、断熱性能も気になるところ。だが、これについても飯田さんはこう言って胸を張る。
「壁面を二重構造にすることで断熱性を高め、厳しいヨーロッパの断熱基準もクリアしています。
そのエネルギー効率の高さから、環境省からも、住宅の脱炭素化につながる技術開発として取り上げていただいています」
高いコストパフォーマンス、安心の耐久性、快適な断熱性と文句なしの3Dプリンター住宅だが、ウイークポイントは無いのだろうか。
1LDK500万円のフジツボ モデルも、将来開発を目指すという3LDK300万円というタイプも、いわゆる上物だけのお値段で、土地代は含まれていない。
その点を改めて問うと、飯田さんは笑顔で、しかし堂々と、主張を展開した。
「お客さまからもよく『家は安くなったとしても、土地が高いから意味がないじゃないか』という言葉をいただきます。
そこで、私たちからは『政令指定都市の中心部から所要時間90分の場所で暮らしませんか』という提案をしています。
社会のデジタル化が進み、リモートワークも定着してきて、通勤の必然性がなくなりつつあるいまなら、実現できる暮らし方だと思います」
実際、飯田さん自身も、福岡市の中心部から、大分県日田市の山里に移り住んだ1人だ。
「たとえば100㎡の土地は東京都心だと5億円ぐらいしますよね。福岡市でも5000万円ぐらい。
でも、私が住んでいるこの山村なら、たった20万円で。固定資産税の節約にもなるのです」
最後に本誌読者に向けてこんなメッセージを寄せてくれた。
「ローンの心配や、終の棲家を見つけられない心配など、住宅の課題というのは、本当に大きな問題でした。
でも、その課題を技術で解決できる未来が、少しずつ近づいてきているということを、覚えておいてほしいです。
一度しかない人生、住宅ローンに縛られることなく、もっと自由に生きていいはずだと思います」
最新技術を詰め込んだ、住む人にも、お財布にも優しい「3Dプリンター住宅」。
次の住まいの候補に入れてみてはいかが。