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2019年に物議をかもした老後2千万円不足問題は、総務省の家計調査から、高齢夫婦の毎月の赤字を約5万5千円と算出。老後を30年として単純計算したものだった。

 

ただ2020年にはコロナ禍の自粛生活で支出が減り、一律10万円給付などもあって、統計上の赤字はいったん解消。2021年も支出の少ない傾向が続いた。しかし、コロナ禍3年目の2022年は全国旅行支援が実施されるなど、“自粛明け”が浸透し、再び消費を楽しむ生活が戻りつつある。ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんはこう語る。

 

「そのうえ、2022年は2万品目以上の食品が平均14%、電気・ガス代は20~30%上がりました。物価高は2023年以降も続きます。もともと年金は物価が上がると、支給額も上がることになっていましたが、今は『マクロ経済スライド』という仕組みで上昇が抑制される。物価が上がっても、年金額は増えないのです。必要な老後資金を見定め、生活コストを見直さないと、老後破綻の危険性もあるのです」

 

そこで本誌は最近の家計調査(2022年1~10月)から高齢者の収支を算出。共に暮らす人数や地域、住居の種類などのライフスタイルに注目して、現時点で公的年金だけだと不足する老後資金の額を試算した。

 

■夫婦2人も、おひとりさまも老後の不足金額に大きな差はない

 

夫婦2人暮らしのケースでは、年金額(公的年金給付)は月22万1131円、支出額は月26万2695円(消費支出22万2695円、非消費支出3万2852円)で、月4万1564円の赤字。生涯(老後30年)で1496万3040円不足することになる。

 

丸山さんによると、気になるのは、教養娯楽費に月2万1053円、交際費に月2万2145円かけていることだ。

 

「このケースはまだまだ節約できると思います。たとえば、楽しむための『教養娯楽費』や『交際費』が合わせて4万円超は使いすぎです」(丸山さん・以下同)

 

意外にも、夫婦2人も、おひとりさまも老後の不足額はさほど変わらない。単身世帯の場合、支出は月14万8982円(消費支出13万6690円、非消費支出1万2292円)に減るが、年金額の平均も11万1890円に下がってしまう。

 

「年金収入は1人分になるのですが、住居費や光熱費など2人世帯の半額には収まらない支出は多いんです」

 

その結果、月々の不足額は3万7092円、生涯で1千335万3120円と、夫婦2人の不足額に近い金額になる。1人だからどうにかなると思わず、資産形成を怠らないことだ。

 

■預貯金だと価値が目減りしていってしまう

 

丸山さんは、円安やインフレが今後も長く続けば必要な老後資金はさらに増えていく可能性が高いという。あくまでも今回試算した金額はひとつの目安にしてほしい。十分な老後資金を作るために、何をしていけばいいのか。

 

「日本は30年ぶりのインフレで、超低金利の預貯金では価値が目減りします。働いて収入のある方は、運用益が非課税で、節税にもなるiDeCoで運用しましょう」

 

40歳から20年間、月2万円をiDeCo口座で利回り3%で運用した場合、元本の480万円が約660万円になる。同時に、年収400万円の人なら、20年で約72万円の税制効果がある。

 

「年金財政は厳しく、受給開始が70歳になるのも時間の問題かと思います」

 

年金頼みでは老後破綻にまっしぐら。節約と運用の両輪で、老後資金を自分で作ろう。

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