■何十年もたたないと安全性は担保できない
遺伝子組み換え食品を食べることで、どんなリスクがあるのか。
「ひとつには、遺伝子組み換え農産物とセットで使用されている除草剤のグリホサートに発がん性があることです」
2015年に世界保健機関の専門機関である国際がん研究機関が、これを認めている。さらに、米国在住の内科医で食の安全性にも詳しい大西睦子さんは、こう懸念する。
「遺伝子組み換え食品や、DNAを操作したゲノム編集食品などの安全性については議論が続いていて、何十年も経過を見ていかなければ安全性が担保できません。ただ、遺伝子操作やゲノム編集をすることで、予期せぬ遺伝子の変異が生じ、これが異質なタンパク質を生み出して人によってはアレルギーを引き起こす可能性があると示唆する論文もあります」
問題は、表示ができなくなったり、わかりにくく変えられたりすることで、「消費者が選択の機会を奪われることだ」と大西さん。
“遺伝子組み換え大国”米国では、2012年に一部の州でようやく導入された「遺伝子組み換え(GMO)」表示がなくなってしまったという。
「世界でわずか数社のタネを独占している企業が、遺伝子組み換え作物のタネも販売しているのですが、そうした企業からの働きかけなのか、連邦政府は昨年1月、耳慣れた『GMO』ではなく、『バイオ工学(BE)』というわかりにくい表示を義務付けるように」
しかも、食品に貼られているQRコードを読み取るなどして情報にアクセスしなければ、どのような遺伝子組み換え食品が使われているかわからないという。
「スマホを持っていない貧困層や、操作できない高齢者などは知ることができないという“格差”が生じています。今回、日本で表示が変更されたのも、遺伝子組み換え作物のタネを製造している企業の影響を受けているかもしれません」
今後も「遺伝子組換えでない」食品を選びたい人は左上の表を参考にしてほしい。前出の原さんは、こうアドバイスする。
「『遺伝子組換え混入防止管理済』または『分別生産流通管理済み』の記載があるものを選びましょう」
これらが、現在の「遺伝子組換えでない」と、同様の生産管理体制がとられている食品になる。また国産品には遺伝子組み換えのものはないので国産のものを選ぶ、JAS(日本農林規格)によって「遺伝子組換え技術を使用しない」が認証の条件になっている有機農産物を選ぶなどの手段がある。
記載がない場合などはメーカーに問い合わせてみてもいい。前出の大西さんは語る。
「加工食品には、遺伝子組換え食品が原材料に使われていることが多いので、自分で素材を購入して調理するのが望ましいですね」
なお、大豆ととうもろこし以外の表示義務のある農作物については、現在も混入率の定めはなく、今後も混入が認められない場合のみ「遺伝子組換えでない」と表示されることになる。日々、口にするものだけに、わかりやすい表示にしてほしいものだ。