羽生結弦がトリノにこだわった理由 心震わせた11歳の思い出
(写真:アフロ)

12月5日に行われたフィギュアスケートGPファイナルの男子ショートプログラム。羽生結弦(25)は、昨シーズンと同じプログラム『秋によせて』で挑んだ。だが、得点は97.43点。いっぽうでライバルのネイサン・チェン(20)はすべてのジャンプを成功させ、110.38点を記録。12点以上も差をつけられることとなった。

 

ショート後、「フリーでは4回転ルッツを跳ぶのか?」という報道陣からの質問に羽生は「気持ちは入れたい」と宣言。優勝への意欲を見せていた。その言葉どおり、7日のフリープログラムで4回転ルッツを成功させた。だがネイサンは合計335.30点と、世界最高記録を更新。羽生は、またも届かなかったーー。

 

3月の世界選手権でネイサンに敗北してから8カ月、待ちに待った決戦の舞台。羽生は並々ならぬ執念で臨んでいたという。

 

「なかでも驚いたのが、4回転ルッツを跳んでいたこと。これは平昌五輪前に失敗してケガの原因となって以来、ずっと封印してきたジャンプなんです。跳ぶことに恐怖心もあったはず。それをあえて“解禁”してきたことからも、今大会に対する熱い思いが感じられました。そもちろん、『ネイサンに勝ちたい!』という気持ちがあったことでしょう。しかしそれ以上に、羽生選手は大会開催地であるトリノに対して特別な思いを持っていたんです」(フィギュア関係者)

 

トリノといえば、’06年に冬季オリンピックが開催された場所。当時、羽生はまだ11歳だった。

 

「トリノ五輪で、男子はロシアのエフゲニー・プルシェンコ選手(37)が金メダルを獲得しました。そのころの羽生少年は、フィギュアにのめり込み始めた時期。活躍を目の当たりにした彼は、テレビの前で心を震わせたそうです。以来、羽生選手にとってプルシェンコ選手はより憧れの存在に。そしてトリノに対しても、特別な思いを抱くようになったのです」(前出・フィギュア関係者)

 

今大会の会場はトリノ五輪のときと同じ。“聖地”では絶対に勝ちたいという思いを胸に秘め、羽生は試合に臨んだのだ。実際、羽生はショートプログラムの公式練習後のインタビューでこう語っていた。

 

「会場自体にすごい大きなエネルギーがあると思いました。自分がすごくスケートにのめり込んでいたときに五輪があった場所だということもあって、いろんな思いもあります。もちろん記憶としても思い出だけではなく、記録としてここに残っているものもあると思う。勝手な思いですけど、そういうものにすごく力をもらいながら演技をしたいなと思っていました」

 

奇しくもフリーが行われた12月7日は、羽生の誕生日。残念ながら最高の瞬間を25歳とともに迎えることはかなわなかった。だが悔しいという思いを糧に、羽生はきっとさらに大きく羽ばたいてくれるはずだ。

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