「『認知バイアス』とはいわば“脳のクセ”。直感でついつい思ってしまう、思考や判断の傾向のことを言います。人は他人のクセにはすぐに気づきますが、自分のクセには気づかないことが多い。つまり『自分のクセに無自覚である』という事実に無自覚なんです」
こう語るのは、東京大学大学院薬学系研究科教授で、脳研究者の池谷裕二さん。間違いであることを、直感で正しいと判断してしまう認知バイアスについて、わかりやすく80問のクイズ形式で解説した著書『自分では気づかない、ココロの盲点 完全版』(講談社)をこのたび出版した。
「認知バイアスは、そうとわかっていても、なかなか修正することができません」
池谷さんによると、みんなが大好きな占いも、この認知バイアスを利用したものの1つだという。これをクイズ形式で解説すると……。
【Q】占い師に「あなたは外見的には気丈に振る舞っていますが、内向的で用心深く、ときに遠慮がちなところがありますね」と指摘されました。これを聞いて次のどちらの感想を持つ人が多いでしょうか?
(1)たしかに当たっている
(2)まったく私のことを理解していない
「答えは(1)。ほとんどの人が占い師の言葉に『当てはまる!』と感じたのではないでしょうか。このように、普遍的な事実を指摘されただけなのに脳が『自分にだけ適合する』『自分のための言葉だ』と信じてしまうことを『バーナム効果』と言います」
日常生活で無意識に『認知バイアス』がかかっているシーンをいくつも知ることで、「あるある」的な楽しさが味わえ、物事を判断する際にも役立つ。
「それに加え、これまで他人の許せなかった部分を『脳のクセだから仕方ない』と思うことで、他者に寛容になります。この本の狙いは、そこにあるんです(笑)」