「特筆すべきはビタミンB1、ビタミンB2が多量に含まれていることです。そら豆はエネルギー源となるタンパク質、糖質が豊富ですが、同時に炭水化物のエネルギー代謝に必要なビタミンB1、脂質やタンパク質をエネルギーに変えるビタミンB2のほか、アミノ酸の一種であるアスパラギン酸も多く含まれるため、疲労回復効果がとても高いんです」
そう語るのは、女子栄養大学栄養クリニックの管理栄養士、森さやかさん。ほかにも、そら豆には美肌、美髪、生活習慣病、貧血予防、便秘解消の効果があるという。
「そら豆は太古の昔から、体力をつけたり、気力を充実させるのに適した野菜といわれていて、人類最古の作物という言い伝えもあります。野菜のなかでは水分が少なく、各栄養素を豊富に含んでいて、バランスがよい野菜といえますね」(森さん)
原産は、北アフリカから西アジアと考えられ、新石器時代に栽培化された。エジプトでは4,000年前から栽培され、儀式に使われたという記録もある。エジプトのピラミッドや、トロイア遺跡からも化石化したそら豆が発見されている。そら豆は世界各国で郷土料理の食材として愛され続けているのだ。そんな、世界のそら豆料理の一部を紹介!
【中国】豆板醤
そら豆、唐辛子を主原料とする中国の発酵調味料。二百数十年前に四川省で最初に作られた。唐辛子が多く含まれているため、とても辛いが、加熱することで香りが立つ。麻婆豆腐をはじめとする四川料理には欠かせない調味料。
【レバノン】サラタ・フール・ビザイト・ザイトーン
そら豆のオリーブオイル仕立てのサラダ。軟らかく煮たそら豆、オリーブオイルで軽く炒めた玉ねぎとにんにく、ざく切りコリアンダーをオリーブオイル、レモン汁であえ、塩、こしょうで味付けして完成。冷やしていただく前菜。
【エジプト】ターメイヤ
軟らかくゆでたそら豆、パセリ、玉ねぎ、コリアンダーを香辛料で味付けし、ペースト状にして揚げたコロッケで、エジプトの定番豆料理。中東諸国では「ファラフェル」として知られ、シリアなどではそら豆とひよこ豆の半々で作る。
【スーダン】フール
そら豆を煮た料理で、スーダンやエジプトなどの伝統的かつ定番の朝食。大量の塩と油を加え、お好みでにんにく、チーズ、玉ねぎを入れたり、レモンを搾ったりしてカスタム。毎日違う味に変化させ、パンとともに食べる。
【イタリア】ファーベ・ペコリーノ
イタリアの生食できるファーベ種というそら豆に、薄くスライスしたペコリーノチーズを添え、オリーブオイル、こしょうを振ったおつまみ。ワインとファーベとペコリーノチーズを食べる習慣は、南イタリアの春の風物詩のひとつ。
【スペイン】ミチロネス
乾燥そら豆と豚肉、チョリソを煮込んだスペイン南部のムルシア地方の郷土料理。もどした乾燥そら豆と豚バラ肉、チョリソ、パプリカパウダー、オリーブオイルを鍋に入れて水をひたひたに注ぎ、3〜4時間煮込めば完成。