「たとえ親切心から言ったことでも、相手がイヤだと思えば、それはハラスメント。この事実に気づかない人が、実は中高年の女性に多いのです」
そう語るのは『高学歴モンスター 一流大学卒の迷惑な人たち』『嫉妬をとめられない人』(ともに小学館新書)などの著書がある、精神科医の片田珠美先生だ。長年の臨床経験にもとづき、現代人が抱える心の問題を分析している。
想像力の欠けている中高年女性のハラスメント=「オバサンハラスメント」、略してオバハラをしてしまうのは、心の奥底に潜んでいる“毒”が原因だと片田先生は指摘する。その“毒”は、大きく次の3つに分けられるという。
【心の毒1】欲求不満
欲求不満を抱えて生きているのに、そのことに気づかないケースが、中高年女性には多いのだという。
「家族が自分を大切にしてくれない、夫の給料は下がる一方……。自分ではどうすることもできないツラい現実に怒っている女性は多いですよね。この怒りをどこにも向けられないからこそ、自分ではなく他人へのおせっかいをせずにはいられなくなるんです」(片田先生・以下同)
【心の毒2】羨望
若いころは自分だってチヤホヤされていたのに、いまや見向きもされないーー。加齢に伴って周囲の扱い方が変わってくると、女性としての自信をなくす人も。
「若さに執着する女性ほど、自分が失った若さを持つ女性に対してキツくなります。これは、他人の幸福が我慢できない怒り、つまり羨望を抱くためです。悔しいからこそ『あなただって不幸なのよ』と言いたくなるのです」
【心の毒3】他人の不幸は蜜の味
心の毒2と表裏一体の、他人の不幸を見て「自分のほうがまだマシ」と安心したい感情だ。
「他人を実際以上に不幸と認識して、相対的に自分のほうが幸せと思い込む。これは女性マウンティングの典型です。幸せな話より離婚や破局などの不幸な話題のほうが需要があるのはこのためです」
これら3つの心の“毒”が、無意識のうちに発言の中に漏れ出してしまい、相手を傷つける結果になる。
「こうした“毒”は人間のもっとも隠したい感情なので、通常は内に秘めて過ごします。しかし、“毒”をためすぎると気づかぬうちに言葉に漏れ、オバハラ加害者となるのです」