「漢方医学の世界では、湿気が多すぎる状態を「湿邪(しつじゃ)」と呼んでいます。これは、湿度が高すぎると、本来なら汗や尿で排出される体内の余計な水分が滞りがちになり、体に悪影響を及ぼしていくというものです。スポンジが水を吸っていくように体が重くだるくなるほか、血流も滞るので疲労物質が蓄積します」
そう話すのは、「診察5年待ち」と呼ばれる順天堂大学教授・小林弘幸先生。
「いっぽう、雨を降らせる低気圧は血管を膨張させるため、神経と周囲の器官が触れやすくなるなど、痛みが出やすい傾向にあります。梅雨時期は、古傷や関節が痛くなる人も少なくありません。また、滞った水分は下半身に停滞しやすいため、腰痛や消化不良、足のむくみなども引き起こします」(小林先生・以下同)
この時期を乗り切るには、水分代謝を上げること。それには、食生活の見直しと、正しい水分補給をすることが大切だという。
「まずは食物繊維を摂取して、いらないもの『捨てる力』をアップさせましょう。たとえばキウイには、水溶性の食物繊維だけでなく、水分代謝を活発にするビタミン類も豊富に含まれているのでおすすめです。カリウムもいいですね。カリウムには、余分なナトリウムを尿として排出する作用があるので、余計な水分をため込むことを防ぎます」
カリウムが豊富な食材は、ほうれん草やバナナ、アボカド、モロヘイヤ、鶏のささ身、アジ、きゅうり、枝豆や納豆などの豆類。
「そしてもうひとつが、代謝をよくする水の飲み方です。大切なのは適度な水分摂取量。1日2千300ccが目安です。食事からも水分は摂取されますので、飲み水としては1千200ccぐらいが適量といえるでしょう。これをこまめに飲むのが、水分代謝を上げるコツ。長時間水分を取らずにいると、細胞はかえって水分をため込みやすくなるので、結果的にむくみやすくなってしまうのです」
具体的な飲み方としては、起床後にまずコップ1杯の水。食事の30分前にも水分補給を。発汗効果を高めるために、入浴前後に1杯ずつ。最後に、就寝前にも水分補給をすればOK.
「つい水分を取りすぎてしまった、というときも、カリウムなど水分代謝の高い食事を心がけていれば、余計な水分は排出されるはず。たくさんの水を飲むと、大量の水分が血管内に入り、血管内の圧力も上がるので、高血圧の発症にもつながります。血圧に不安がある方はなおさら、食事と水分補給には気をつけましょう」