「特定の野菜に含まれる『スルフォラファン』がうつ病の予防や再発防止に効果があることをつきとめました。この成分は、ブロッコリーやカリフラワーなどのアブラナ科の野菜に多く含まれますが、最も多く含んでいるのが『ブロッコリースプラウト』なんです」
そう語るのは、精神疾患の予防や治療法について長年研究を重ねている、千葉大学社会精神保健教育研究センターの橋本謙二教授。今年8月、マウスによる実験で、ブロッコリースプラウトに多く含まれる「スルフォラファン」が、ストレスを抑制する働きを持つことがわかったという。
「スルフォラファンは、がんの予防、肝機能の改善、胃がんの原因となるピロリ菌を減少させるといった研究結果が過去に報告されています。しかし、ストレスを抑制する、“心の健康”にも効果が認められたのは初めてです」
実験では、攻撃的な大きなマウスと小さなマウスを1日に10分間、同じケージの中に入れ、残りの時間は仕切りを入れて飼育する。すると大マウスは小マウスをいじめはじめる。それが10日間続くと、小マウスは、透明のケースで仕切ったとしても大マウスに近寄らなくなる。さらに、用意された甘い砂糖水さえも飲まなくなってしまう。
「人間社会の“いじめ”と同じ状況を作りだすと、マウスもうつ状態になります。またケージに水と砂糖水を用意すると、健康な状態だと8〜9割のマウスは砂糖水を飲みますが、うつ状態になったマウスは、5割程度しか砂糖水を飲みません」
しかし、実験の前にスルフォラファンを注射された小マウスの多くは、同じ実験でも違う反応を見せた。
「いじめられた後も、透明のケースで仕切った大マウスに平気で近づき、興味を示しました。しかも、スルフォラファンを注射したマウスのうち7割は、ストレスを与えられても、健康なマウスと同じように砂糖水を飲みました。この実験結果から、事前にスルフォラファンを体内に取り入れていると、ストレスに強く、うつ病になりにくいことがわかったんです」
スルフォラファンを直接投与するだけでなく、同成分を含む“エサ”を与えながら行った実験でも、マウスは健康な状態を保つ場合が多かった。橋本教授はこう考える。
「この結果は、薬ではなく、“食事だけ”でうつ病予防、さらには再発防止を期待できることを表しています」
厚生労働省によれば、’14年の調査で国内のうつ病患者数は70万人以上。疲れているのに眠れない、食欲がない、やる気が起きず何をしても楽しめない。こうした気分が2週間以上ずっと続くような状態が、うつ病と診断される目安になっている。
「うつ病を防ぐためにも、食事の観点から生活を見直すとよいでしょう。ブロッコリースプラウトには、通常のブロッコリーのおよそ7倍ものスルフォラファンが含まれています。さらに、村上農園が販売している“発芽3日目”のものだけをパックした『ブロッコリースーパースプラウト』には、ブロッコリーの20倍以上も含まれています」
ブロッコリースプラウトに含まれるスルフォラファンの働きは、約3日間持続することがわかっている。食べる頻度は「3日に1度」がおすすめだ。