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「運動が苦手な子どもは、運動神経が悪いのではなく、実は“見る力”が弱く、目と体の連携が足りていないことが多いのです。そのため私は子ども向けのビジョントレーニング・プログラムを開発しました。すると、足が速くなったり、ダンスがちゃんと踊れるようになったりして、運動嫌いを克服できた子どもも続出しました。いま子どもたちはゲーム機で目を使いますが、狭い範囲で動かすだけなので、眼球運動にはなっていないのです。また、眼球だけでなく体もいっしょに動かすトレーニングで、体の軸を作ることが、運動能力のアップにつながるのです」

 

そう語るのは、元WBA世界スーパーフライ級王者で日本視覚能力トレーニング協会代表理事も務めている飯田覚士さん(48)。ビジョントレーニングは、焦点を合わせる機能、両目の協調機能、動体視力、立体視能力、奥行きの認識などの視覚能力を向上させるトレーニング。

 

日本では、10月22日にWBA世界ミドル級の新チャンピオンとなった村田諒太選手(31)が指導を受けていたことで一躍有名になったが、アメリカでは100年近い歴史があり、スポーツの世界はもちろん、視覚に障害がある人のリハビリや子どもの学習障害の改善にも使われている。老眼が進む40代以上の人にとってもビジョントレーニングは大きなメリットがあるという。

 

「目の遠近の焦点が合いやすくなるので、老眼になるのを遅らせることにもつながります。ゴルフやテニス、卓球などの球技をする人は、ボールが見えやすくなって、スポーツがますます楽しくなり、『目が悪くなったらスポーツをやめる』ということもなくなるでしょう。さらに高齢になると、湯飲みに急須からお茶を注ぐときに、こぼれてしまうことがありますが、これは目と体が連動しておらず、空間を把握する動きが衰えているからなのです。歩いていて人によくぶつかる、つまずいてケガをしやすくなったという人もこの動きが弱くなっている可能性があります」(飯田さん)

 

そこで今回、高齢者でも簡単にできて効果的な3つのトレーニング法を飯田さんに教えてもらった。1日1回でもいいので、A〜Cの順番で毎日続けることで、視覚能力をアップさせることができるという。

 

【A】親指おいかけっこ

 

■横の動きを両眼で追う

 

(1)親指を立てて腕を伸ばし、体の斜め前にセットして両眼で見る。

(2)ゆっくりと指を前まで移動させ、眼だけで追っていく。

(3)そのまま反対側まで追う。左右繰り返す。

 

■上下の動きを両眼で追う

 

(1)親指を立てて頭上にセット。両眼で見る。

(2)そのまま下に下ろしていく親指を、眼だけで追う。

(3)両眼で見えるところまで下げる。上下繰り返す。

 

■斜めの動きを両眼で追う

 

(1)親指を立てて斜め上にセット。両眼で見る。

(2)指を対角線上に下ろしていき、両眼で追う。往復し、逆も同様に行う。

 

【B】視線固定、前後歩き

 

(1)壁にシールなどで目印をつける。

(2)まっすぐな線をイメージし、目印を見つめながら前に3歩歩く。

(3)後ろに3歩歩く。2と3を繰り返す。

 

【C】数字でもぐらたたき

 

(1)タテ6×ヨコ6で1〜36までの数字をランダムに書いたシートを作る。

(2)シートの前に座る。

(3)書かれた数字を1から36まで順番にタッチしていく。

(4)速く正確にできるように繰り返す。

(5)速くできるようになったら、両手で交互にタッチしたり、数字を増やすなど、難度を上げていく。

 

また、ビジョントレーニングを行うと副次的なものとして、目元の美容への効果もあるという。

 

「物が見づらいと、眉間にシワを寄せたり、目を細めたりしてしまいますが、それがなくなるので、シワを作る動作が少なくなり、目元もぱっちりしてきます。眼球を動かすことで、目の周りの血流もよくなるため、目の下のクマが薄くなったという人もいます」(飯田さん)

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