冬から春への季節の変わり目。体の不調を感じたときは、「薬」の前に「野菜」を試してみませんか? ここでは、近年の研究成果から明らかになった、野菜が持つ薬事効果を紹介。副作用なし、おいしく安全な“新しい処方箋”をお届けします!
「近年、食べ物に含まれる各種成分が人にどのような影響を及ぼすのか、最先端の科学技術を用いた研究が著しく進んでいます。これまでは“民間伝承”と思われてきた野菜が持つ薬事効果がつぎつぎに立証されているんです」
こう話すのは、薬剤師で薬学博士の田村哲彦先生。たとえば刺身のツマとして使われる、しそ。古くから生魚を食す際に殺菌効果があるといわれてきたが、成分のペリルアルデヒドに抗菌・防腐作用があることが実証されたばかりか、せきを鎮める効果も動物実験によって明らかに。
「食べ物に含まれる薬効成分を“機能性成分”と呼びます。今回はその成分が多い野菜に注目。現在、科学実験で効果が実証されているものを紹介」(田村先生・以下同)
■生活習慣病を改善する野菜
【高血圧】セロリ
不足すると血管を収縮させ高血圧に直結するカリウムが豊富。カロリーが低い点も高評価。
【狭心症】らっきょう
豊富に含まれる硫化アリル類が心臓の冠動脈に働いて血液の流れを妨げる血栓などを除去。
【糖尿病】山芋
成分中の多糖類やアルカロイドに血糖値上昇抑制作用があり、血糖を調節し膵臓をいたわる。
【膀胱炎】アスパラガス
腎臓の機能回復をさせる力と尿量を増やす働きは抜群。膀胱炎に対して優れた薬効がある。
【骨粗しょう症】小松菜
緑黄色野菜で特にカルシウムが豊富。骨粗しょう症の原因となるカルシウム不足を防ぐ。
田村先生は40年前から、こうした食べ物の薬事効果に注目。西洋医学と東洋医学の両方を学び、病気の予防や治療に食べ物をうまく取り入れる健康法「食治」を研究してきた。
「最もいい例が山芋。短冊状に切ったものをスープにして、8人の糖尿病患者に毎日食べてもらった実験で、早い人は1週間で病気の指標となるヘモグロビンA1cの数値が下がり始め、1カ月後には全員の数値が改善しました」
これは山芋に含まれる多糖類(ジオスコチレンA~F)の効用だとわかっている。またセロリの血圧を下げる成分にも注目。
「セロリは古代エジプトから薬草として用いられてきました。不足すると高血圧に直結するカリウムを豊富に含んでいるのが特長です」