リアル梅ちゃん先生!「神の手を持つ女医」脳神経外科医編
「技術と信念と体力、そして女性らしいデリカシー、この4つを兼ね備えた、まるでNHK連続テレビ小説『梅ちゃん先生』を地で行く、女性医師がいます」と話すのは、聖マリアンナ医科大学助教授を経て、現在は神経内科医および作家として活躍する米山公啓さん。
男性社会の外科分野で女性が第一線で活躍するには、技術的に秀でていることは必須。そして、そのなかには”神の手を持つ女医”がいると米山さんはいう。脳神経外科の加藤庸子先生はその1人。脳動脈瘤の開頭手術で、これまでに女医として世界最多の1千800例の手術を行ってきた藤田保健衛生大学医学部(愛知県)・脳神経外科教授だ。
脳のなかの血管(動脈)に瘤状の血だまりができるのが動脈瘤。これが破裂すると、くも膜下出血を起こし、30%以上が死に至る恐ろしいもの。破裂する前に検査で見つかった動脈瘤の根元をチタン製のクリップで留め、破裂を未然に防ぐのが、加藤先生がもっとも得意とする未破裂脳動脈瘤の開頭クリップ手術。
「脳動脈瘤の手術はスピードがすべてではありません。ここは速く、ここは大事なところだからゆっくりと丁寧にという緩急が必要になります。それにはやはりどれだけ多くの術例を経験しているかが、ものを言うんですよ。経験を積むうちに、どんな状況でも手順を尽くして対応していけば、必ず道は開けることを知りました」
そう、おだやかな口調で話す加藤先生。脳外科医になったばかりのころは、すでに破裂してくも膜下出血を起こし、血を吹いている前で立ちすくんだこともあったという。
「若いころは患者さんから『女医さんの執刀では心配』と言われたこともしばしば。でも年を重ねるにつれ、患者さんとの強い信頼関係が結べるようにもなりました」(加藤先生)
加藤先生の昨年の手術実績は約180例。いまもっとも働きざかりの脳外科医だ。