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妊娠とともに望まぬ退学を迫られる女子高生が多数いる。そんな文科省の調査が波紋を広げている。実際に妊娠と出産を経験した当事者が実情を明かしたーー。

 

文部科学省の調査によると、’15〜’16年度に高校側(全日制・定時制3,571校)が把握した生徒の妊娠2,098件のうち、妊娠を理由に学校を退学せざるをえない状況に追い込まれていた生徒は、全体の約3割にあたることがわかった。

 

「学業の不継続は、将来世代の貧困を生みかねない」と問題視した文科省は、今年3月末、教育委員会などに対し、「妊娠・出産を理由に、安易に退学させないよう支援や配慮を求める」と学校側に通知を出した。

 

そこで本誌は10代で妊娠・出産を経験、学業と子育てを両立した女性に、自らの経験を語ってもらった。

 

広島市内に住む高木知花さん(仮名・23)は、中3の冬に15歳で妊娠。相手は、同じ中学の同級生だった。

 

「子どもが好きだったし、絶対に産むと決めていました。彼も、『俺は中学を卒業して働くから』と言ってくれて。でも、私の母は『苦労するから堕ろしなさい』と反対して、何度もけんかしました」

 

そんなとき、間に立ってくれたのが、広島で40年以上、10代の少女たちの性に向き合ってきた産婦人科医の河野美代子先生だった。

 

「河野先生は、将来困るから、学校だけはやめないですむ方法を考えよう、と母とも彼とも話をしてくれました」

 

高木さんには、看護師になりたいという夢があった。

 

「河野先生のアドバイスもあって、妊娠を隠して、高校を受験することにしました。貧血がひどかったんですが、合格することができました」

 

入学後、“体調不良”を理由にして、1年間休学。第1子を出産後に復学した。

 

「うちの高校では妊娠がバレて退学する同級生もいました。だから、卒業まで子どもがいることは隠し通しました」

 

高木さんが学校に行っている間は、彼の母親が子どもを預かってくれた。

 

「彼も、働きながら定時制の高校を卒業し、いまは地元の工場で働いています。私は高校卒業後に看護学校に進み、2年前に念願の看護師になれました。本当に勉強を諦めないでよかった」

 

高木さんは、看護学校を卒業したタイミングで入籍。2カ月前に第2子も誕生し、幸せな日々を送っている。

 

しかし実際は、高木さんのように出産を選ぶ人は少ない。妊娠した未成年の多くが中絶を選んでいる。前出の河野先生によると「高校生が妊娠すると、ほとんどの場合、女子生徒だけがやめさせられてきた」という。

 

「かつて妊娠した女子生徒が妊娠健診に行くと、保健師が学校に連絡し、退学に追い込まれたケースがあります。つい最近も、妊娠した県立高校の生徒が退学させられました。学校はいつも、『母体に何かあったら責任を取れない』という理由で退学を促しているのです」(河野先生)

 

また、予期せぬ妊娠について相談を受け付けている「にんしんSOS東京」の大庭美代子さんは、こう分析する。

 

「10代からの相談の多くが、性についての正しい知識を持たないがゆえの“妊娠したかも”という相談。生理が1日遅れているから妊娠したと思い込んだり……。子どもたちは、驚くほど性に対する正しい知識を持っていないのです」

 

かといって、避妊の仕方などを教えることを「セックスの肯定につながる」と反発する大人もいる。

 

「避妊だけを切り取って教えるのではなく、自分や相手を大事にするとはどういうことかという人権教育を含めた性教育を、早い段階から行う必要があります」(大庭さん)

 

現状をどう改善していくのか、文科省の担当者が話す。

 

「学習指導要綱に基づいて、性に関する正しい知識を持ち、正しく行動できるように指導していきます。また、妊娠した生徒が学業を継続できるように、養護教諭やスクールカウンセラーが支援するほか、体育などはレポートの提出で代替するなど対応をとるよう各学校に呼びかけています。退学を希望する生徒に対しても、学業を継続するさまざまな方法があることを情報提供していく予定です」

 

若くして母になる。それだけで女性の未来が閉ざされてしまうなら、それは社会にとっても大きな損失のはずだ。

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