「親が定年退職したとき、銀行に『人生これから長いです。退職金を運用してみませんか』と勧められるまま、1,000万円もつぎ込んだのに、任せきりにしてしまった結果、資産は3割減に。私は“こんな失敗はしたくない”と、投資の勉強の手始めとしてiDeCoを始めました」(47歳専業主婦)
自営業ばかりでなく会社員であっても、かつてのような十分な企業年金は期待できないいま……。老後資金のため、個人型確定拠出年金iDeCoを始めている人は増えてきた、と確定拠出年金アナリストの大江加代さんは語る。
「もともと’01年にスタートした制度ですが、’17年1月から公務員や専業主婦まで加入対象者が広がり、誰でも入れる個人年金に。加入者は毎月、コンスタントに約3万人ずつ増え、’18年6月時点では94万人ですので、現在では100万人を突破しているでしょう」
50代にさしかかり、“年金をいまから作るなんて、無理かも”……と諦めている人も多いだろう。それでも、いまからiDeCoをはじめることにメリットはあるのだろうか。ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんに解説してもらった。
「iDeCoは、扱う金融機関が用意する投資信託などを、毎月定額で購入し、運用するかたち。最終的に積み立てたお金を、60歳以降に年金や一時金として受け取るしくみです」(風呂内さん・以下同)
証券会社で投資信託を購入するケースとは違い、iDeCoの場合は大きなメリットがある。
【メリット1】拠出金は全額所得控除の対象!
「まず、拠出金の全額が所得控除されることが、いちばんわかりやすいメリットです」
毎月2万円を拠出する場合、1年間の控除対象額は24万円だ。
「所得によって税率が変わりますが、年収300万円の人は、所得税は24万円に対して5%の1万2,000円、住民税は10%の2万4,000円、合わせて3万6,000円の減税に。扶養家族になっている専業主婦は、所得控除について考えにくいですが、夫の税金を少しでも安くしたい人は一考の価値があります」
ちなみに、少額投資非課税制度のつみたてNISAは、控除の対象にはならない。
【メリット2】利益も非課税!
「株などの資産運用で得た利益は、約20%が課税対象。たとえば100万円の投資額が110万円に増えて、10万円の利益が出た場合、約2万円は税金となるのです。ところがiDeCoの場合、運用中の利益はすべて非課税になります」
その減税効果はどのくらいあるのだろうか。毎月2万円の拠出額で、30年間、年利3%で運用できた場合で計算してみると……。
「積立額は合計720万円ですが、30年で約1,162万円に増えます。半年ごとに約20%の課税があると増えにくく、約1,049万円。つまり、課税されないことで約113万円も“得する”わけです」