「初詣では、日ごろお世話になっている神様、仏様に今年も無事に新年を迎えられたことを感謝するのが目的。神社でも寺院でも、ふだんからお参りに行く場所であることが重要でしょう。全国的には神社への初詣でが多いですが、関東では寺院へ行く人も多いといわれています」
こう話すのは、寺と神社の旅研究家の吉田さらささん。神社仏閣に出かける際は、事前に少しの“予習”をしておくだけで、神様、仏様の世界が身近になり、お参りがぐっと楽しくなる。初詣でに出かける先にどんな神様、仏様が祭られているか、また、いつの時代のどんな建物があるかなどを調べておこう。
「お寺に初詣でに行く場合は、その前に自分の守護仏を調べてみては? 守護仏とは、生まれた干支によって決まる守り本尊。あらかじめ自分の守護仏が祭られているお寺を探して初詣でに出かけるのも1つの楽しみ方。浅草寺には、珍しくすべての守護仏がそろっているお堂もあるので、家族で出かけて、それぞれの守護仏にお参りするのもいいでしょう」(吉田さん)
そこで、初詣でする前に知っておきたい生まれ年で決まる8尊の「守護仏」を紹介。
【千手観音】干支:子
・代表的な寺院:唐招提寺(奈良県奈良市)
千の手に持った道具で人々をもらさず救う慈悲の仏様。実際の仏像には千本も手はなく、合掌する2本と左右20本ずつの場合がほとんどだが、唐招提寺の千手観音は953本と千に近い手を持つ。
【虚空蔵菩薩】干支:丑、寅
・代表的な寺院:輪王寺 両大師堂(東京都台東区)
宇宙のように広大無限の知恵と慈悲を持ち、知識や記憶力アップのご利益がある。若き日の空海も、虚空蔵菩薩の真言を100日かけて100万回唱える修業を行い、その後唐で密教の教義を修めた。
【文殊菩薩】干支:卯
・代表的な寺院:安倍文殊院(奈良県桜井市)
「三人寄れば文殊の知恵」のことわざで知られるように、知恵をつかさどる仏様で、合格祈願などにご利益がある。釈迦如来を助ける役目を持ち、脇侍として釈迦如来像の横に控えていることが多い。
【普賢菩薩】干支:辰、巳
・代表的な寺院:持光寺(広島県尾道市)
慈悲と理知で人々を救い、延命長寿のご利益で知られる。かつて仏教では女性は成仏できないとされていたが、この普賢菩薩だけは女人成仏を助けてくれるとして、女性にあつく信仰されてきた。
【勢至菩薩】干支:午
・代表的な寺院:三千院(京都府京都市)
知恵の光ですべてを照らし、亡くなった人が仏になれるよう拝んでくれる仏様。合掌し、宝冠に水瓶を頂いている姿が一般的。単独で祭られることはほとんどなく阿弥陀如来の脇に控えている。
【大日如来】干支:未、申
・代表的な寺院:教王護国寺(京都府京都市)
密教において、すべての仏様、ひいては宇宙の中心であり、同時に万物にあまねく存在する。仏の世界を表す曼荼羅の中心に描かれ、きらびやかな宝冠や装飾品を身につけ、印を結んで瞑想している。
【不動明王】干支:酉
・代表的な寺院:成田山 深川不動堂(東京都江東区)
仏の知恵や迷いや邪心を断ち切り、願望をかなえてくれる仏様。「お不動さん」として庶民に親しまれ、祭っている寺院は数多い。不動明王のご利益を授かるには、炎で煩悩を浄化する護摩祈祷がおすすめ。
【阿弥陀如来】干支:戌、亥
・代表的な寺院:高徳院(神奈川県鎌倉市)
極楽浄土の主である仏様。「南無阿弥陀仏」と唱えて帰依すれば極楽浄土へ行けると信じられる。藤原道長も極楽往生を願い、阿弥陀如来を深く信仰した。両手で輪を作る印相が一般的な特徴。
「私は、自身の守護仏である不動明王を祭る深川不動堂にしばしば足を運ぶのですが、こちらの護摩祈祷に参列すると、気分がとてもスッキリします。それだけでなく、その後、思っていたことがかなうなど必ずいいことが起きるんですよ。これもお不動さんのご加護かもしれません」(吉田さん)