十分な食事や睡眠を与えられず、父の命令で立たされ続けた。そして冷たいシャワーを浴びせられて――(写真はイメージです) 画像を見る

十分な食事や睡眠を与えられず、父の命令で立たされ続けた。そして冷たいシャワーを浴びせられて――。彼女の悲鳴に誰かが真剣に応えていれば、最悪の事態は避けられたはずだった。

 

1月24日、父親の栗原勇一郎容疑者(41)による虐待で命を奪われた千葉県野田市の小学4年生の心愛ちゃん(10)。発見されたとき、体には複数のアザがあり、胃にほとんど内容物がなかったという。2月4日には、夫の暴行を幇助していた疑いで、母親のなぎさ容疑者(31)も逮捕された。

 

両親から激しい虐待を受けながらも、心愛ちゃんは懸命に「命のSOS」を発し続けていたことがわかってきた。

 

’17年8月、家族4人は沖縄県糸満市から、事件の起きた千葉県野田市内の家賃7万円ほどのマンションに移り住んだ。

 

「11月6日、転校先の野田市立山崎小学校のいじめに関するアンケート調査で、心愛ちゃんは《お父さんにぼう力を受けています。先生、どうにかできませんか》と初めてSOSを発します。それを受け、柏児童相談所は、彼女を一時保護。その後、市内に住む、父方の実家、心愛ちゃんの祖父母の家に預けられたようです」(全国紙記者)

 

祖父母の家に避難していたころの心愛ちゃんは笑顔で生活ができていたようだ。

 

しかしそのころ、父親は野田市教育委員会を訪れていた。心愛ちゃんのアンケートを開示するように強く迫り、なんと教育委員会はコピーを渡してしまう。教育評論家の松本肇さんがこう憤る。

 

「心愛ちゃんは、告白したことがバレたら、父親からよりいっそうひどい目にあうことは体感的にわかっていたはず。それでも“いまここで伝えるしかない”と勇気を振りしぼったのでしょう。子どもが暴力を訴えるとき、少し大げさに伝えるケースも多いのですが、心愛ちゃんが書いたアンケートには、無駄な言葉がありません。プロが見たら誰もが本当に危険な状態だとわかったはずです」

 

父親がアンケートを受け取った直後に、心愛ちゃんは市内の別の小学校に転校させられている。そこは父の母校でもあった。

 

そして、2月26日には、勇一郎容疑者が、『お父さんに叩かれたというのは嘘』と書かれた心愛ちゃんの“手紙”を携え、柏児童相談所に現れている。

 

「後の会見で、所長は『父親に書かされた可能性が高いと認識していた』ことを明かしています。それにもかかわらず、心愛ちゃんを自宅に戻す決定を下してしまいました」(全国紙記者)

 

娘のSOSを父は“裏切り”と捉えたようだ。自宅に戻ったのち、暴力はエスカレートしていった。

 

「手紙に違和感を持っていた児童相談所の職員が、3月になってようやく心愛ちゃんと面会します。このとき彼女は『言ってもいいのかな……』と小声で話したうえで、父親に無理やり書かされていたことを告白。でも、なんの対応も取られなかった。その声は、黙殺されたのです」(前出・全国紙記者)

 

――大人は助けてくれない。心愛ちゃんはそう思ってしまったのか、昨年11月に転校先の小学校で行われたアンケートで、虐待を訴えることはなかった。

 

それからまもなく、心愛ちゃんは短い生涯を、実父の手で閉じられた。命のSOSが届くことがないままに――。

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