長年連れ添い、よくも悪くも「当たり前」のような存在になっている夫という存在。そんな夫がある日突然、先立ってしまったら……。その後の長い人生を、あなたはどうやって生きていきますか?
「それがときに障壁であったとしても、夫の存在があなたの暮らしを『ガード』していた点は否めません。老後のおひとり様は、インターホンが鳴ってもすぐに玄関は開けない、電話はナンバー・ディスプレイにするなど、用心深すぎるぐらいの生活を心がけたほうがよいでしょう。また、さまざまな契約ごとをすべて夫任せにしてきた人は、保険や各種契約の書類など、自分で目を通す習慣を早くからつけておくこともポイントです。年をとると何事もおっくうになるので、『人任せ』の癖は早く修正しないと、ライフラインに影響が出るような事態を招いてしまうことも」
こう語るのは、中高年の生態に詳しいエッセイストの小川有里さん。よきにつけ悪しきにつけ、新しい人生の始まりともいえる「夫の死後」。だが、独り身になった女性は「心細さ」よりも「不用心」に気をつけるべし、と小川さんは強調する。
そこで、小川さんの周囲で実際に起きた事例を基に、夫の死後の“暮らし”を待ち受ける、7つの落とし穴をシミュレーション。安心で健康的なおひとり様ライフを送れるかどうかは、適切な対処次第だ!
【ケース1】買い物に出るのに運転手がいない!→宅配・通販をフル活用しよう
「お米や野菜など重たい食料品や、かさばる日用品、衣装ケースといった大きな買い物も、いまではほとんど宅配サービスが利用できます。下手に友人にお願いすると『貸し借り』が生まれてしまうため、対価を払ってサービスを受けたほうが気楽です」(小川さん・以下同)
【ケース2】料理や掃除がどんどん手抜きに!→家事の呪縛から解き放たれよう
「それまでさんざん家事をやってきたのだから、飽きて当然! 1人になって、コンビニの便利さに目覚めた人も多いですよ。主婦歴の長い女性は、コンビニに飽きれば自然と料理をするし、どこかで片付けも行うもの。自分の家事力を信じておおらかにいきましょう」
【ケース3】自由な時間を持て余してしまう!→「ジャンル別」の友達をつくろう
「友達付き合いは大切ですが、特定の友達とべったりいると、かえって行動が狭まることに。どこにでも1人で行ける身軽さを持ちながら、『趣味友』『ジム友』『美術館友』など、ジャンル別にお付き合いを分けましょう」
人間関係は、浅く広くが正解です!
【ケース4】話し相手がいなくなってしまった!→新聞の音読でもいいから声を出そう
「もともと社交的でない人は、夫という唯一の話し相手がいなくなることで、滑舌が悪くなってしまうことも。そんな人は、本や新聞を音読すると、誤嚥予防、滑舌キープに。私もときどきやっていますが、思った以上に疲れます」
スピードを上げて音読すると認知症予防になるともいわれているので、毎日の音読習慣で、舌、喉、脳を鍛えよう。
【ケース5】夫に気兼ねなく友人を家に呼べる!→「たまり場」にならないよう注意して
「『夫に気兼ねしなくていいから』と自宅に人を招くのもいいですが、集まってくるのはだいたい暇な人(苦笑)。夫がいないぶん、帰ってもらうタイミングもつかめず、ストレスをためてしまうことも。自宅へのご招待はほどほどに。外で集まるほうが無難でしょう」
【ケース6】何かと言い寄ってくる男性が!→適度な距離感を保たないとドロ沼に
「実際に私の周りでも、高齢者の恋愛は盛んです。ただ、女性は茶飲み友達程度のお付き合いを望んでいるのに対し、男性はそうでないケースが圧倒的! OBF(オールド・ボーイフレンド)とのお付き合いは、つかず離れずが一番」
“女は灰になるまで”は、むしろ逆だった!
【ケース7】訪問販売やセールス電話が断れない!→日ごろから自分自身で「判断」する訓練を
悪質なセールスや詐欺など、世の中は魑魅魍魎だらけ。
「昔から言われていますが、うまい話ほど裏があるもの。『こんなに一生懸命説明してくれているんだし』といった同情心は一切不要。言われるがままではなく、何事も自分で要・不要をドライに決められる判断力を!」
夫の死後の“落とし穴”を回避するための3カ条は次のとおりだ。
1)「なんとかなる」と腹をくくる!
2)1人でできる楽しみを見つける!
3)用心深く生きる
セーフティガードでもあり、ときに疎ましくもあった夫がいなくなった後こそ、自分の身は自分で守る習慣を! それが亡き夫を安心させることにもつながるのだ。