“おひとりさま”は、元気なうちは、自由気ままにシングルライフを満喫できるが、問題は年をとってからだ。万が一、病気で倒れて病院に入院したとき、「誰が身元保証人になってくれるのだろうか」「死んだ後は誰が手続きをしてくれるのか」――と、将来への不安は尽きない。
そんなニーズに応えるために、最近、安否確認や身元保証、死後の手続きなどの代行をパッケージで提供する民間サービスが広がっているが、『ひとり終活』(小学館新書)の著者で、シニア生活文化研究所所長の小谷みどりさんはこう注意を促す。
「身元保証や死後の手続きを代行する高齢者のサポートサービスは、費用が想定以上にかかったり、預託金を流用されるといったトラブルに巻き込まれたりすることもあるので注意が必要です。たとえば、ある団体に預託金として約100万円支払ったが、事務経費と身元保証費のみに充てられ、葬儀や遺品の整理など、『死後の手続き』は別料金がかかることを知り、解約したいと思っても返戻金がほとんどなく、『損をした』という声をよく聞きます」(小谷さん・以下同)
頼れる親族が身近にいない場合は、まずは自治体で実施しているサービスを、目的別に個別に申し込んで使うと、費用も安く済むという。
そこで高齢になり必要になってくるサポートの中から、「死後の手続き」について小谷さんに解説してもらった。
■「死後の手続き」を最小限に抑える死後事務委任契約
亡くなった後、死亡届の提出、健康保険や公的年金の資格抹消の手続き、さらに、お墓を事前に用意していれば納骨の手配、家の中の遺品整理、公共料金やメールアカウント等の解約などを生前に代理人にお願いしておくのが「死後事務委任契約」。
「葬儀費用などの実費と代理人への報酬を、生前に預託金として渡しておくというのが一般的。事務手続きの内容や数によって費用も大きく変わってきますが、数十万円程度が必要になることもあります」
専門家に依頼した際の相場は、死亡届の提出は3万円~、健康保険等の資格抹消手続きは5万円~、葬儀の手続きの代行は規模にもよるが5万~20万円。遺品整理は業者に依頼するだけで3万円~、メールアカウント等の削除手続きは1アカウント1万円~が目安という。生きているときにできるだけ身の回りの片付けをしておけば、費用を安くできる。
最近では、おひとりさまの高齢者のために、終活支援に乗り出す自治体も増えている。東京都中野区では、全国の自治体初の、週2回見守り、死んだ後は、葬儀の手配や費用の補償、室内の片付けまでしてくれる「中野区あんしんすまいパック」が今年1月からスタート。初回登録料は1万6,200円、月額利用料1,944円。年齢制限はなく年収256万8,000円以下の人で賃貸に住んでいる人、同区に転居したい人は申し込みができる。