「現代人は食べすぎです。糖尿病、高脂血症、脳出血、心疾患、メタボ、がんなど、多くの病気や体の不調は食べすぎによるものです。食べる回数を減らして、空腹をしっかり感じる習慣をつけると、病気を遠ざけ、若さを保てます」
こう話すのは、あおき内科さいたま糖尿病クリニックの院長、青木厚先生だ。青木先生は、1日の中で食べない時間を16時間持つことをすすめている。
「現代人の食事は糖質が多すぎです。本来、人間の体は飢餓状態、つまり、低血糖、低栄養に耐えられるようにできています。その証拠に血糖値を上げる作用のあるホルモンは成長ホルモン、コルチゾール、カテコールアミン、グルカゴンなど複数あるのに対し、血糖値を抑えるホルモンはインスリンしかありません」(青木先生・以下同)
ところが、戦後、飽食の時代に入ってから、生活習慣病と呼ばれる病気が急増し始めた。
「これは1日3食の弊害かもしれません。今では、1日3食きちんと食べることが奨励されており、私たちもそれを信じて疑ってきませんでした。ところが『1日3食が健康によい影響を与える』といった確たるエビデンスは、少ないのです」
むしろ3食取ることのデメリットのほうが多いと青木先生は指摘する。
「ひっきりなしに内臓が働かされていることから、内臓疲労が起きているはずです。また、糖分の取りすぎによる血糖値の乱高下が、糖尿病や心疾患などさまざまな病気の原因になります。たとえば、ご飯1杯にはスティックシュガー17本分の糖分が含まれています。これを1日3回も取れば、確実に糖分過多です」
健康のために3食きちんと食べていたことが、皮肉にも体調を悪化させているというのだ。
そこで青木先生がおすすめするのが、プチ断食、「16時間食べない時間を作る」ことだ。これで体内の“オートファジー”がフル回転するようになるのだという。
「“オートファジー”とは細胞を新しく生まれ変わらせる働きです。飢餓状態では、オートファジー活性が数倍上昇します。私たちの体は外からの栄養供給がなくなると、肝臓や筋肉に蓄えられているグリコーゲン(ブドウ糖)を使用するのですが、グリコーゲンが枯渇すると、体は“飢餓状態”と判断し、体脂肪を燃焼してエネルギーとして利用するようになります。体脂肪がエネルギーとなる際、ケトン体という代謝物質が生まれます。血中でのケトン体濃度が高くなればなるほど、飢餓状態が強くオートファジー活性も高くなるのです」
空腹(飢餓状態)が継続すると、脂肪燃焼のほか、血糖値降下、免疫力アップ、記憶力・認知力アップなどがみられる。そのため、海外の医療現場でも断食療法は注目されているのだとか。
「糖尿病、認知症、心疾患、動脈硬化、アレルギーなど免疫疾患の治療、老化予防のほか、がんの治療法としても効果をみせています」
青木先生も9年前、40歳のときに舌がんを患った。これがきっかけで、断食療法に着目するようになったという。
「私は幼いころからよく風邪をひく体質で、『免疫力が低い』という自覚がありました。舌がんになったことで、体質改善を決意し、いろいろな文献を読みあさったところ、空腹の時間を持つことの重要性に気づいたのです」
早速実践してみたところ、効果はすぐに表れた。体重、体脂肪率が減り、血中のケトン体の量が増えた。仕事に集中できる時間が長くなったとも感じている。がんの再発もなく、今ではスリムな体形で、風邪ひとつひかない丈夫な体になったそうだ。